第68話『スクリーンの中の再会』
M&M COMPANY本社。
朝の会議室に、いつもと違う空気が流れていた。
真優は資料を一枚めくって、静かに言う。
「映画」
結衣は即座に反応する。
「またですか?」
美優は短く補足する。
「主演」
その一言で、結衣は嫌な予感を確信する。
「誰の?」
真優は一拍置いて答える。
「私たち」
結衣は固まる。
「……真優さんと美優さん?」
美優は頷く。
「W主演」
少し間。
結衣は恐る恐る聞く。
「ジャンルは?」
真優が淡々と答える。
「学園」
結衣の顔が一気に曇る。
「学園……?」
麗華がニヤッと笑う。
「青春系?」
凛が資料を読みながら言う。
「恋愛要素あり」
結衣は机に突っ伏す。
「情報が多いです……」
役員が説明を続ける。
「今回の映画は“リアル音楽学園ドラマ”です」
結衣は顔を上げる。
「リアルって何ですか」
美優が一言。
「演技と現実の境界を曖昧にする」
結衣は即座にツッコむ。
「一番怖いやつですそれ」
真優が小さく笑う。
「でも面白いでしょ?」
結衣は即答できない。
その時、扉が開く。
「失礼します!」
入ってきたのは凛と麗華。
さらに少し遅れて、結衣。
結衣は自分を指差す。
「……私もですか?」
真優は頷く。
「当然」
美優は短く。
「主要キャスト」
結衣は天井を見る。
「主要って言われると余計怖いんですけど」
凛が資料を見ながら言う。
「役名は?」
役員が答える。
「白石凛さんはクール系天才音楽少女」
凛は一言。
「そのまま」
麗華が笑う。
「そのまますぎでしょ」
続いて。
「麗華さんは自由奔放な作曲家キャラ」
麗華はニヤッとする。
「楽しそう」
結衣は小声で言う。
「地でいけそうなの怖いんですけど」
そして。
「天野結衣さんは——」
結衣は息を呑む。
役員が続ける。
「努力型の主人公」
結衣は固まる。
「普通に私じゃないですか」
真優が即答。
「そうだよ」
美優も一言。
「適任」
結衣は机に突っ伏す。
「逃げ場ない……」
真優が軽く手を叩く。
「じゃあ決めようか」
結衣は顔を上げる。
「何をですか」
真優は笑う。
「関係性」
凛が即座に反応。
「学園だから?」
美優は一言。
「重要」
麗華が楽しそうに言う。
「じゃあ私は自由人でいいよね」
凛が冷静に返す。
「それで収まるのがすごい」
結衣は恐る恐る聞く。
「真優さんと美優さんは?」
真優は即答。
「教師」
結衣は固まる。
「教師!?」
美優も頷く。
「音楽教師」
結衣は叫ぶ。
「完全に支配構造じゃないですか!」
真優は笑う。
「言い方」
凛がぼそっと言う。
「じゃあ結衣は?」
結衣は即答できない。
真優が少しだけ優しく言う。
「中心の生徒」
結衣は沈黙。
「……また中心ですか」
美優は一言。
「そこから逃げられない」
その時、役員が付け加える。
「そしてこの映画、ライブシーンは実際のライブを使用します」
結衣は顔を上げる。
「実際?」
真優が頷く。
「本番撮影」
凛が静かに言う。
「つまり映画と現実が混ざる」
麗華が笑う。
「面白くなってきたじゃん」
結衣は机に突っ伏す。
「怖いって言ってるんですけど……」
夜。
稽古室。
映画のリハーサル。
真優は教師役としてピアノの前に立つ。
美優もドラムセットの横で腕を組む。
「授業開始」
結衣は机に座る。
「私、生徒ですよね?」
真優は即答。
「そう」
凛も隣で座る。
「同級生役」
麗華は椅子の上で笑う。
「この学校自由すぎない?」
真優がピアノを鳴らす。
ポーン。
「今日の課題」
美優が続ける。
「“音で感情を作る”」
結衣は小声で言う。
「普通に難しすぎません?」
凛が頷く。
「映画だから」
麗華が笑う。
「でもリアルでもやってるよね」
結衣は即答。
「言わないでくださいそれ」
真優が結衣を見る。
「結衣」
「はい」
「あなたは中心」
結衣は固まる。
「またですか」
美優が一言。
「映画でも」
結衣は机に突っ伏す。
「もう設定固定されてる……」
凛が小さく笑う。
「でも悪くない」
麗華も頷く。
「物語の中心っていいじゃん」
結衣は小さく言う。
「重いですけどね……」
その夜。
リハーサルが終わる頃。
真優が言う。
「これで準備完了」
美優が続ける。
「次は撮影」
結衣は天井を見る。
「もう逃げ場ないですね」
凛が短く言う。
「最初からない」
麗華が笑う。
「でも面白い」
結衣は小さく息を吐く。
(もう本当に“物語の中”だ)
その瞬間、真優が静かに言う。
「カットはないよ、この世界」
美優も一言。
「続く」
照明が落ちる。
でも物語は、まだ終わらない。
第69話へ続く。




