第49話 『ライバルの登場』
映画主演決定から数日後。
天野結衣は一気に注目の存在となった。
テレビ。
ネットニュース。
雑誌。
どこでも話題になっている。
『新人モデルが映画主演』
『M&M COMPANYの次世代エース』
『天野結衣に期待』
結衣本人はというと——
「主演って何したらいいんだろう……」
台本を抱えて悩んでいた。
M&M COMPANY本社。
演技レッスン室。
真優が苦笑する。
「まず演技の練習かな」
「ですよね……」
結衣は机に突っ伏した。
そこへ。
美優がやって来る。
「順調?」
「全然です」
即答だった。
「台本難しいです」
美優は台本を受け取る。
しばらく読む。
「面白そう」
「そこですか!?」
真優が笑う。
いつものやり取りだった。
その頃。
都内の別の芸能事務所。
一人の少女がダンスレッスンを受けていた。
長い黒髪。
鋭い目。
負けず嫌いそうな雰囲気。
名前は——
白石凛
十七歳。
若手期待株。
彼女は休憩中もスマホを見ていた。
画面には天野結衣の記事。
「主演か……」
小さく呟く。
マネージャーが近づく。
「気になる?」
「少し」
凛は正直だった。
「同年代で主演はすごいと思う」
そう言いながらも。
瞳には闘志があった。
「でも」
「?」
「負けたくない」
マネージャーが笑う。
「らしいね」
凛は昔からそうだった。
誰よりも努力する。
誰よりも負けず嫌い。
だからここまで来られた。
数週間後。
映画の顔合わせ。
出演者たちが集まる。
結衣は朝から緊張していた。
「吐きそう……」
真優が笑う。
「まだ吐いてないから大丈夫」
「基準がおかしいです」
その時。
会場入口が開いた。
スタッフたちがざわめく。
誰かが入ってきた。
結衣も振り返る。
そこにいたのは。
白石凛だった。
凛も結衣を見る。
数秒。
視線が交わる。
不思議な空気。
敵意ではない。
でも。
互いに意識している。
そんな空気だった。
監督が紹介する。
「今回の重要キャストです」
凛が頭を下げる。
「白石凛です」
堂々としている。
結衣も慌てて立ち上がる。
「天野結衣です!」
少し声が大きかった。
会場が少し笑う。
結衣は真っ赤になる。
凛も思わず笑った。
「緊張してる?」
「してます……」
「正直だね」
初対面。
しかし。
なぜか話しやすかった。
その日のリハーサル。
凛の演技を見た結衣は驚く。
自然。
感情表現も上手い。
圧倒される。
「すごい……」
思わず呟く。
その時。
凛が隣に来た。
「結衣」
「はい?」
「私」
凛は微笑む。
「負けるつもりないから」
結衣が固まる。
しかし。
次の瞬間。
結衣も笑った。
「私もです」
初めてだった。
自分からそう言えたのは。
遠慮ではない。
嫉妬でもない。
純粋な挑戦。
ライバルがいるから成長できる。
美優と麗華のように。
そんな関係になれる気がした。
遠くから見ていた美優は小さく頷く。
真優が聞く。
「どうしたの?」
「楽しみ」
美優は答えた。
結衣。
凛。
二人の出会いは。
映画だけでは終わらない。
やがて芸能界を代表する存在へと成長していく。
その第一歩が。
今、始まった。
第50話へ続く。




