第48話 『結衣に届いたオファー』
M&M COLLECTIONのCM公開から一か月。
天野結衣の知名度は急上昇していた。
街中の広告。
テレビCM。
SNS。
どこを見ても結衣の姿がある。
M&M COMPANY本社。
モデル部門。
結衣はいつものようにレッスンを受けていた。
ウォーキング。
表情管理。
ポージング。
人気が出ても努力は変わらない。
むしろ以前より練習量は増えていた。
「お疲れ様」
レッスン終了後。
美優がやって来る。
「お疲れ様です!」
結衣は元気よく頭を下げる。
美優は少し微笑む。
「最近忙しい?」
「はい!」
「大丈夫?」
「楽しいです!」
即答だった。
美優は安心したように頷いた。
その時。
真優が走ってきた。
「結衣!」
「はい?」
「社長室!」
「またですか!?」
「今回は本当にすごい!」
結衣は嫌な予感がした。
数分後。
社長室。
美優。
真優。
麗華。
玲美愛。
いつものメンバー。
そして机の上には一冊の企画書。
結衣が座る。
「今度は何ですか……?」
真優が笑う。
「これ見て」
企画書を開く。
結衣の目が大きくなる。
そこに書かれていたのは。
『映画出演オファー』
結衣は固まった。
「え?」
もう一度読む。
やっぱり映画だった。
「えええええ!?」
社長室に叫び声が響く。
真優が耳を塞いだ。
「大きい!」
「だって映画ですよ!?」
結衣はパニックだった。
モデル。
CM。
そこまでは分かる。
でも映画は違う。
演技経験ほぼゼロ。
自信もない。
不安しかない。
麗華が資料を見る。
「結構有名な監督ね」
真優も頷く。
「新人を発掘することで有名」
結衣はさらに固まった。
「私なんで?」
その疑問は当然だった。
すると美優が答える。
「CM見たんだと思う」
「CM?」
「結衣らしかった」
短い言葉。
しかし。
結衣には嬉しかった。
その日の午後。
オンライン面談。
映画監督と直接話すことになった。
画面に映る監督。
穏やかな表情の男性だった。
「初めまして」
「は、初めまして!」
結衣は緊張している。
監督は笑った。
「そんなに緊張しなくて大丈夫」
「はい……」
「私は君のCMを見ました」
結衣は黙って聞く。
「演技は上手くない」
いきなりだった。
真優が吹き出しそうになる。
結衣も固まる。
しかし。
監督は続けた。
「でも」
「君には本物がある」
部屋が静かになる。
「本物?」
結衣が聞く。
監督は頷いた。
「夢を追う目だよ」
その言葉に。
美優が少しだけ反応した。
昔。
同じことを言われたことがあった。
監督は続ける。
「技術は教えられる」
「経験も積める」
「でも目の輝きは作れない」
結衣は言葉を失った。
監督は笑う。
「だからオファーした」
「映画に出てみないか?」
結衣の胸が高鳴る。
怖い。
不安。
失敗するかもしれない。
でも。
それ以上に。
挑戦したい。
そんな気持ちが生まれていた。
面談終了後。
社長室。
全員が結衣を見る。
静かな時間。
結衣は深呼吸した。
そして。
「やります」
美優が微笑む。
真優も笑顔。
麗華も頷いた。
「いい返事」
結衣は拳を握る。
モデルとして始まった夢。
今度は映画。
新しい世界。
新しい挑戦。
そして。
数日後。
映画の詳細が発表される。
主演。
天野結衣。
新人としては異例の大抜擢だった。
だが。
そのニュースを見ていた一人の少女がいた。
同じ年齢。
同じく芸能界を目指す少女。
彼女はテレビの結衣を見ながら呟く。
「負けない」
新たなライバル。
新たな物語。
結衣の人生は。
今まさに大きく動き始めていた。
第49話へ続く。




