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『君の笑顔が可愛すぎで好きだった!』  作者: 優貴(Yukky)


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第32話 「すれ違う未来」

東京。

美優のスケジュール帳は、これまで以上に埋まっていた。

モデル。

CM。

雑誌。

テレビ。

そして――

新しく始まったアパレルブランド立ち上げプロジェクト。

午前8時。

都内オフィス。

美優は会議室で資料を見ていた。

机の上には大量のデザイン案。

色見本。

生地サンプル。

市場調査資料。

モデルの仕事とはまったく違う世界だった。

「こちらが春夏ラインの候補です」

担当者が説明する。

美優は真剣な表情で資料を見つめる。

「この色は少し強いかも」

「もう少し柔らかい印象がいいです」

スタッフが驚く。

「なるほど……」

「確かに美優さんらしいですね」

会議が続く。

気付けば三時間が経過していた。

普通なら疲れる。

しかし美優は不思議と集中していた。

(面白い)

自分の考えが形になる。

服になる。

商品になる。

今まで味わったことのない感覚だった。

その頃。

フランス。

真優は映画の最終オーディションに向かっていた。

巨大なスタジオ。

世界中から集まった俳優たち。

全員が実力者。

空気が違う。

「緊張してる?」

隣の俳優が聞く。

真優は少し笑った。

「かなり」

「同じだ」

互いに笑う。

しかし心臓は落ち着かない。

今日で決まる。

主演か。

それとも落選か。

運命の日だった。

オーディション開始。

演技。

アクション。

感情表現。

全てを出し切った。

終わった瞬間。

真優は椅子に座り込む。

もう何も残っていなかった。

「ありがとうございました」

深く頭を下げる。

結果は分からない。

でも後悔はなかった。

夜。

東京。

美優は帰宅していた。

時計は23時を過ぎている。

それでも机の上には資料が広がっていた。

ブランド名候補。

ロゴ案。

販売戦略。

スマホが鳴る。

真優だった。

「もしもし」

『終わった』

声が少し疲れている。

「お疲れ様」

『ありがとう』

少し沈黙。

『そっちは?』

「会議」

『まだやってたの?』

「今終わった」

真優が少し笑う。

『社長みたいだね』

「まだ違う」

『でも近いじゃん』

美優は返事に少し詰まった。

近い。

確かにそうだった。

少し前までモデルだった。

今は経営や企画の話ばかりしている。

自分でも変化を感じていた。

「真優は?」

『主演結果待ち』

「自信ある?」

数秒沈黙。

『半分』

真優らしい答えだった。

「じゃあ大丈夫」

『根拠は?』

「半分あるなら十分」

真優が笑う。

『相変わらずだね』

電話は数分で終わった。

しかし。

どこか以前と違う感覚が残った。

話題が変わった。

考えることが変わった。

いる世界が少し違ってきた。

それでも。

友達であることは変わらない。

翌週。

パリ。

映画会社。

真優は会議室へ呼ばれていた。

心臓がうるさい。

扉が開く。

プロデューサーが立ち上がる。

「おめでとうございます」

真優は固まる。

「あなたに主演をお願いします」

数秒。

理解が追いつかない。

そして。

「……本当に?」

「もちろんです」

会議室に拍手が起きる。

真優の目に涙が浮かぶ。

海外映画主演。

夢だった。

いや。

夢以上だった。

その夜。

真優は真っ先に美優へ連絡した。

『主演決まった』

送信。

数秒後。

『おめでとう』

すぐ返信が来る。

そして続けて。

『本当におめでとう』

真優は少し笑った。

『ありがとう』

しかし。

次の返信が来るまで少し時間が空いた。

『こっちも決まった』

『何が?』

『ブランド立ち上げ』

真優は画面を見る。

しばらく黙った。

主演。

ブランド立ち上げ。

二人とも前へ進んでいる。

でも。

進む方向は違う。

それがはっきり分かる瞬間だった。

窓の外。

パリの夜景。

東京の夜景。

遠く離れた場所。

それでも二人は空を見上げていた。

同じ夢ではない。

同じ未来でもない。

でも。

互いに挑戦している。

だからこそ。

負けたくなかった。

友情。

尊敬。

ライバル意識。

様々な感情が混ざり合う。

そして。

美優は実業家への道を。

真優は世界的女優への道を。

本格的に歩き始める。

二人の未来は。

ここからさらに大きく変わっていく。

第32話 完

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