第24話 「並ぶ場所」
テレビ出演から数日後。
美優と真優の名前は、もはや単体では語られなくなっていた。
「美優と真優」
それが一つの現象として扱われ始めていた。
東京・ブランド本社。
大きなガラス窓から、昼の光が差し込む。
その下で、美優は新しい企画書を見ていた。
《MIYU PROJECT × INTERNATIONAL COLLABORATION》
海外ブランドとの共同企画。
そして、その横に小さく書かれた名前。
武田真優。
マネージャーが説明する。
「次のフェーズです。国内の話じゃなくなってます」
プロデューサーも頷く。
「もう“日本のブランド”ではなく、“世界のプロジェクト”に変わってます」
美優は資料をめくる。
でも、あまり驚いていない。
「ここまで来たかって感じ?」
マネージャーが聞く。
美優は少し考えて。
「違う」
顔を上げる。
「最初から、ここまで行く前提だった」
同じ頃。
海外。
真優は映画の最終リハーサルに入っていた。
カメラテスト。
英語のセリフ。
監督の視線。
その中で、ふとスマホを見る。
短い通知。
《MIYU PROJECT 国際展開決定》
真優は小さく息を吐く。
「ほんとにやるんだ」
その夜。
ビデオ通話。
画面に映るのは、美優と真優。
もう“久しぶり”という感覚はない。
真優が言う。
「見たよ。海外展開」
美優は頷く。
「うん」
「本気だね」
「今さら」
即答。
真優は少し笑う。
「私、完全に巻き込まれてるんだけど」
美優も笑う。
「最初からでしょ」
少し沈黙。
画面越しの距離はあるのに、もう遠くは感じない。
真優が言う。
「ねえ、美優」
「なに」
「これさ」
一拍。
「どこまで行くの?」
美優はすぐに答えない。
少しだけ考える。
そして言う。
「決めてない」
真優が眉を上げる。
美優は続ける。
「でも一個だけ決まってる」
真優が画面越しに見つめる。
「止まる場所は、今じゃない」
真優は小さく笑う。
「それ、怖い言い方」
美優も笑う。
「でしょ」
数秒の沈黙。
でもそれは不安じゃなく、確認の間だった。
真優が言う。
「じゃあさ」
「うん」
「まだ一緒にいるってことだよね」
美優は少しだけ目を細める。
「並んでる限りは」
真優は小さく息を吐く。
「それで十分」
画面の向こうとこちら。
同じ方向を見ている二人。
でも、どちらも“追いつく”ではなく“並び続ける”選択をしていた。
そしてそれが、もう普通になり始めていた。
第24話 完




