第22話 『生放送』
東京・テレビ局。
ガラス張りの廊下を抜けると、すでにスタジオは完成していた。
観客席、照明、カメラ。
すべてが“生放送の緊張”をまとっている。
今日の番組は特番。
《次世代カルチャーの中心人物たち》
そのゲストとして呼ばれたのは——
美優と武田真優。
楽屋。
鏡の前でメイクを受けながら、美優は軽く息を吐く。
「テレビって、久しぶりだな」
マネージャーが言う。
「今は“出る側”じゃなくて、“呼ばれる側”ですからね」
同じ頃。
隣の楽屋。
真優は静かに台本を読んでいる。
その横顔は、いつもの仕事モードだった。
スタッフが声をかける。
「お二人、本番5分前です」
廊下。
すれ違う形で、二人が出る。
一瞬だけ目が合う。
真優が小さく言う。
「緊張してる?」
美優は即答する。
「してない」
真優は少し笑う。
「嘘つき」
スタジオ。
歓声。
司会者が明るく声を上げる。
「今日は話題の二人です!」
「実業家・女優・インフルエンサーの美優さん!」
「そして海外映画主演候補の武田真優さん!」
拍手。
照明が強くなる。
美優と真優が並んで座る。
少しだけ距離を空けて。
でも、その距離はもう“他人”ではない。
司会者が聞く。
「お二人って、今どういう関係なんですか?」
一瞬の沈黙。
真優が先に答える。
「仕事仲間……でいいと思います」
司会者が笑う。
「でもかなり特別そうに見えますけど?」
観客席がざわつく。
美優がマイクを持つ。
「特別というか」
一拍。
「一番やりづらい相手です」
スタジオが笑う。
真優も少しだけ笑う。
司会者が続ける。
「どうしてですか?」
美優は真優を見る。
「ちゃんと見てくるから」
一瞬、スタジオが静かになる。
真優が小さく息を吐く。
「それはお互い様」
司会者がすぐにフォローするように笑う。
「じゃあ、信頼関係はあると?」
真優が即答する。
「あります」
美優も続ける。
「ある」
空気が少し変わる。
“仲の良さ”でも“ビジネス”でもない。
もっと曖昧で、でも確かなもの。
司会者が次の質問へ進める。
「これからの目標は?」
真優が言う。
「選ばれる側として、もっと上に行くこと」
美優が続ける。
「作る側として、選ばれる基準を変えること」
少し間。
司会者が笑う。
「なんか、方向違うようで同じですね」
美優と真優、同時に一瞬黙る。
そして、ほぼ同時に小さく笑う。
真優が言う。
「そうかも」
美優も言う。
「そうかもね」
放送は続く。
でも、視聴者の中ではもう気づいていた。
この二人は“セットで完成する関係”だと。
CM前。
カメラが引く瞬間。
真優が小さく、美優にだけ聞こえる声で言う。
「こういうの、慣れた?」
美優は即答しない。
少しだけ考えて。
「慣れる前に、次行くから」
真優は少しだけ笑う。
「相変わらず」
美優も笑う。
「でしょ」
CMへ。
第22話 完




