第9話『交差する評価』
――ロサンゼルス・CM撮影から数日後。
世界同時公開されたCMは、予想以上の反響を呼んでいた。
SNSはすぐに埋まる。
『Two rising stars』 『Japanese actresses taking over global ads』 『誰この二人?めっちゃ印象残る』
そして、二人の名前が並んで拡散されていく。
MAYU TAKADA
MIYU
武田真優は、ホテルの部屋でその反応を見ていた。
スマホの画面には、海外メディアの評価記事。
「感情の変化を自然に表現する新世代主演」
真優は小さく息を吐く。
「……新世代って便利な言葉だな」
嬉しい。
でも、どこか実感が薄い。
その頃、日本。
美優はCMランキングの特番に呼ばれていた。
司会者が興奮気味に話す。
「今、日本CM業界で最も勢いがある女優と言えばこの人です!」
画面に映る美優。
スタジオの観客が拍手する。
「美優さん、もう“CM女王候補”どころじゃないですよね?」
司会の問いに、美優は少し笑う。
「いやいや、まだ全然です」
でも、その言葉とは裏腹に――
周囲はすでに“次の看板”として扱い始めていた。
収録後。
マネージャーが言う。
「もう業界の評価はトップクラスだよ」
「……トップ?」
美優は少しだけ首をかしげる。
「でもさ」
窓の外を見る。
「真優も、もっとすごいとこいるんでしょ?」
マネージャーは答えない。
その沈黙が、少しだけ現実的だった。
同時刻。
海外。
武田真優はインタビュー会場にいた。
世界メディアの前。
カメラの数は以前より多い。
質問が飛ぶ。
「あなたはすでに世界的女優ですか?」
真優は少しだけ黙る。
そして答える。
「I don’t think so」
一瞬、会場が静かになる。
続ける。
「I am still growing」
その言葉に、会場の空気が少し変わる。
拍手。
納得ではなく、“期待”の拍手だった。
夜。
真優はホテルでニュースを見ていた。
『MIYU becomes Japan’s CM queen candidate』
画面を見た瞬間、少しだけ止まる。
「……やっぱり」
小さくつぶやく。
その頃、日本。
美優もまた、海外ニュースを見ていた。
『MAYU TAKADA draws global attention』
画面を見たまま、動かない。
「……置いてかれてるわけじゃない」
そう言い聞かせるように言う。
でも。
どちらも分かっていた。
もう「同じ場所」では評価されていない。
同じスタートラインだった二人は、
それぞれ別の“頂点候補”として見られ始めていた。
そしてその評価は、まだ途中だった。
これからさらに――加速する。
第9話 完




