表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『君の笑顔が可愛すぎで好きだった!』  作者: 優貴(Yukky)


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

405/472

第5話『すれ違う成功』

――海外・イベント会場裏。

武田真優は、リハーサル後の控室で一息ついていた。

まだ手の震えが少し残っている。

けれど、さっきより確実に“場”に慣れ始めていた。

その時、スタッフが差し出したタブレットにニュース通知が表示される。

「日本の人気若手女優、美優がCM業界で急成長」

真優は何気なく画面を見る。

「……美優?」

小さくつぶやく。

記事には、笑顔でCMに出演する美優の姿。

明るい表情。

自然な存在感。

そして「CM女王候補」という見出し。

真優は少しだけ目を細めた。

「すご……」

純粋な驚きだった。

でも同時に、胸の奥にわずかな“距離”を感じる。

その頃、日本。

撮影スタジオ。

美優は新しいCM撮影の準備中だった。

メイクを直されながら、マネージャーと話している。

「次、また大型案件決まりそうです」

「え、まだ増えるの?」

「むしろ今が序盤です」

美優は苦笑する。

「序盤って何……」

その日も撮影は順調だった。

監督がうなる。

「美優ちゃん、今日一番いいね」

「ほんとですか?」

「うん。もう“完成しつつある顔”だよ」

その言葉に、美優は一瞬だけ黙る。

完成。

その言葉は、どこか引っかかった。

夜。

美優は帰りの車の中でスマホを見ていた。

真優からのメッセージはまだ既読のまま。

美優は少しだけ考えてから返信する。

『こっち、かなり順調』

そして少し迷って、もう一文。

『でもさ、なんか遠い感じする』

送信して、窓の外を見る。

東京の夜は明るいのに、なぜか少し静かに見えた。

同時刻。

海外のホテル。

武田真優はベッドの上でスマホを見ていた。

美優のニュース記事。

そして、自分とは違う場所で進んでいる現実。

「CM女王候補……」

声に出すと、少しだけ実感が湧く。

でも、その一方で思う。

(私も今、世界の中にいるのに……)

同じ“成功”なのに、方向が違う。

翌日。

真優の現場。

エミリーが資料を広げながら言う。

「明日は本番イベントです。世界配信もされます」

「……世界配信」

真優はその言葉をゆっくり繰り返す。

エミリーは続ける。

「あなたの名前は、さらに広がります」

その言葉に、真優は少しだけ頷く。

夜。

真優はホテルの窓から街を見下ろしていた。

日本とは違う夜景。

でも、ふと頭に浮かぶのは日本の友達のことだった。

(美優、すごいな)

素直な気持ち。

でも、その後に小さくもう一つ思う。

(同じ場所にいないのに、競争みたいだな)

その瞬間、自分でも少し驚く。

競争ではないはずなのに。

でも――

世界に出るということは、そういうことなのかもしれなかった。

スマホが鳴る。

美優からのメッセージ。

『海外どう?』

真優は少し笑って返す。

『こっちは世界配信イベント前』

少し間を置いて続ける。

『そっちもすごいらしいね』

すぐに既読がつく。

だが返信は来ない。

画面を見つめたまま、真優はつぶやく。

「……置いてかれてるわけじゃないよね」

その声は、誰にも届かない。

でも確かに、そこにあった。

一方、日本。

美優はスマホを握ったまま、画面を見ていた。

返信はできないまま。

ただ一言だけ浮かぶ。

(真優も、すごいところにいる)

でもそれを言葉にするのは、少しだけ怖かった。

二人は同じ場所に立っているようで、少しずつ離れていく。

それでも、それぞれの道は確かに“上”へ伸びていた。

そしてまだ誰も知らない。

このすれ違いが、やがて――大きな交差点になることを。

第5話 完

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ