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『君の笑顔が可愛すぎで好きだった!』  作者: 優貴(Yukky)


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389/434

第89話「ノミネート」

六月某日。

アフレコ終了後。

スタジオにはどこか落ち着いた空気が流れていた。

第二期の収録も中盤。

現場の連携は完成しつつある。

監督のOKも増えた。

スタッフの表情も明るい。

順調だった。

その時。

マネージャーが慌てた様子でスタジオへ入ってきた。

「みんな!」

キャストたちが振り返る。

「大変!」

真優 「何ですか?」

美優 「トラブル?」

葵 「機材故障?」

玲奈 「台本変更?」

マネージャーは首を振った。

そして。

スマホを掲げる。

「ノミネートされた!」

一瞬。

意味が分からなかった。

「……え?」

真優が聞き返す。

マネージャーは興奮していた。

「声優アワード新人賞!」

空気が止まる。

数秒後。

「えぇぇぇぇぇ!?」

スタジオが揺れた。

―――

国内最大級の新人声優賞。

毎年注目される賞。

受賞者は一気に知名度が上がる。

新人なら誰もが憧れる舞台。

その候補者が発表された。

真優。

美優。

葵。

玲奈。

四人全員。

同時ノミネートだった。

監督も驚いていた。

「全員か……」

スタッフたちもざわつく。

快挙だった。

作品としても異例。

真優はまだ実感が湧かない。

「私が?」

美優も同じだった。

「信じられない」

玲奈はスマホ画面を見つめている。

葵は静かだった。

だが。

その瞳は揺れていた。

―――

帰り道。

四人は駅まで歩いていた。

誰もが少し浮ついている。

それほど大きな出来事だった。

真優が笑う。

「すごいね」

美優 「うん」

玲奈 「そうですね」

葵 「……」

少しだけ沈黙。

そして。

葵が口を開く。

「でも」

三人が見る。

葵は前を向いたまま言った。

「受賞者は一人」

空気が変わる。

それが現実だった。

ノミネートは四人。

でも。

勝者は一人。

真優も。

美優も。

玲奈も。

言葉を失う。

葵は続ける。

「もちろん嬉しい」

「でも」

「負けたくない」

真っ直ぐな本音だった。

玲奈が小さく笑う。

「同感です」

美優も頷く。

「私も」

そして。

真優も笑った。

「じゃあ全員ライバルだね」

四人の視線が交わる。

今までもライバルだった。

でも。

今回は少し違う。

同じ賞を目指す。

同じ舞台を目指す。

本当の勝負だった。

―――

その夜。

真優は自室でスマホを見ていた。

SNS。

祝福のコメント。

応援メッセージ。

たくさん届いている。

嬉しい。

でも。

不思議と浮かれてはいなかった。

頭に浮かぶのは。

玲奈。

葵。

美優。

三人の顔。

強い。

本当に強い。

だからこそ。

負けたくない。

真優は机の上の台本を開いた。

まだ足りない。

もっと上へ。

もっと成長したい。

その想いが胸に灯る。

新人賞発表まで残り二か月。

四人の想いは。

少しずつ熱を帯び始めていた――。

第89話 完

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