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『君の笑顔が可愛すぎで好きだった!』  作者: 優貴(Yukky)


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385/434

第85話「追いつきたい背中」

神崎玲奈。

第二期から参加する新キャスト。

彼女が現れてから数日。

スタジオの空気は少しだけ変わっていた。

もちろん悪い意味ではない。

むしろ逆だった。

誰もが刺激を受けていた。

特に――

真優は。

―――

「ありがとうございました」

アフレコ終了。

監督からOKが出る。

しかし。

真優の表情は晴れなかった。

スタジオを出た後も。

どこか考え込んでいる。

美優が気付く。

「どうしたの?」

「え?」

「さっきから静か」

真優は苦笑した。

「そんなことないよ」

「ある」

即答だった。

そこへ葵も加わる。

「分かりやすい」

「二人ともひどい」

「で?」

葵が聞く。

真優は少し迷った。

だが。

隠しても仕方がない。

「玲奈ちゃん」

美優は納得したように頷く。

「ああ」

葵も理解した。

「演技か」

真優は小さく頷いた。

「すごいんだもん」

それは素直な本音だった。

玲奈の演技には説得力がある。

台詞一つ。

息遣い一つ。

感情の乗せ方一つ。

全部が自然だった。

「なんかさ」

真優は歩きながら続ける。

「私より上手い気がして」

少しだけ。

悔しそうな声だった。

―――

その日の夜。

真優は自宅で台本を開いていた。

時計を見る。

午後十一時。

普通なら寝る時間だ。

それでも。

ページをめくる手は止まらない。

録音した自分の声を聞く。

玲奈の演技を思い出す。

比べてしまう。

違いを探してしまう。

「……ダメだな」

小さく呟く。

比べても意味はない。

頭では分かっている。

それでも気になる。

その時。

スマホが鳴った。

メッセージ。

送り主は玲奈だった。

真優は目を瞬く。

開いてみる。

『今日の収録お疲れ様でした』

『少し聞きたいことがあります』

真優は慌てて返信した。

『お疲れ様!』

『どうしたの?』

すぐに返事が来る。

『真優さんは』

『どうやって感情を作っていますか?』

真優は固まった。

予想外だった。

『え?』

『私に?』

『はい』

数秒後。

さらにメッセージが届く。

『真優さんの演技』

『好きなんです』

―――

真優は画面を見つめた。

思考が止まる。

好き?

私の演技が?

慌てて返信する。

『私、玲奈ちゃんの方がすごいと思ってた』

すると。

珍しく返信まで時間がかかった。

そして。

届いた文章。

『私は逆です』

真優は目を見開く。

『技術では勝てるかもしれません』

『でも』

『真優さんの演技には人を惹きつけるものがあります』

『それが羨ましい』

静かな部屋。

スマホの画面だけが光っている。

真優は言葉を失った。

ずっと。

玲奈の方が上だと思っていた。

でも。

玲奈もまた。

自分にないものを見ていた。

―――

翌日。

収録前。

真優はスタジオの廊下で玲奈を見つけた。

「玲奈ちゃん!」

玲奈が振り返る。

「おはようございます」

真優は笑った。

「昨日ありがとう」

「?」

「メッセージ」

玲奈は少しだけ目を逸らした。

珍しく照れている。

「本当のことなので」

真優は笑う。

「私も」

「え?」

「玲奈ちゃんの演技好きだよ」

玲奈が一瞬固まる。

そして。

ほんの少しだけ笑った。

それは初めて見る自然な笑顔だった。

「ありがとうございます」

真優は思った。

ライバル。

その言葉は正しい。

でも。

それだけじゃない。

お互いを認め合い。

刺激し合い。

高め合う存在。

そんな関係もあるのだと。

―――

スタジオのドアが開く。

監督が入ってくる。

「全員揃ったな」

キャストたちが席に着く。

第二期の収録はまだ始まったばかり。

ライバルもいる。

仲間もいる。

だからこそ。

もっと上を目指せる。

真優は新しい台本を開いた。

その瞳には。

昨日までとは違う光が宿っていた。

第85話 完

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