第83話「次のステージへ」
イベント終了後。
鳴り止まない拍手の余韻を背に、真優たちはステージ袖へと戻ってきた。
ドアが閉まる。
ようやく観客の歓声が少し遠くなった。
その瞬間だった。
「終わったぁぁぁぁ!!」
真優がその場にしゃがみ込んだ。
「足が動かない!」
「腰も抜けそう!」
「緊張しすぎた!」
美優は思わず吹き出した。
「最後まで隠し通せてなかったけどね」
「隠してたの!?」
「たぶん本人だけ」
葵も苦笑する。
「ライブ前の手、震えてたし」
「見ないでよ!」
「無理」
「隣だったから」
真優は顔を覆った。
「恥ずかしい……」
しかし。
その表情はどこか晴れやかだった。
失敗はあった。
反省点もある。
それでも。
全力を出し切った。
そんな達成感があった。
控室へ戻る。
ドアを開けた瞬間。
パンッ!!
大きな音が響いた。
「!?」
真優たちが驚いて立ち止まる。
次の瞬間。
色とりどりの紙吹雪が舞った。
「イベント大成功おめでとう!!」
スタッフたちの声。
監督。
音響スタッフ。
マネージャー。
制作陣。
全員が笑顔だった。
真優は目を丸くする。
「えっ!?」
「サプライズ?」
「そういうこと」
美優も驚いていた。
葵も珍しく目を見開いている。
監督が笑う。
「お疲れ様」
「みんなよく頑張った」
拍手が起こる。
スタッフたちから自然と拍手が広がる。
真優は胸が熱くなった。
このイベントは。
自分たちだけでは作れなかった。
たくさんの人が支えてくれた。
だからこそ。
今この瞬間がある。
「ありがとうございました!」
三人は深く頭を下げた。
その後。
軽い打ち上げが始まった。
ケータリングが並ぶ。
飲み物。
軽食。
デザート。
真優の目が輝いた。
「ケーキ!」
「やっぱりそこか」
美優が呆れる。
「だって美味しそう!」
「ライブ直後なのに元気だな」
葵も半ば感心していた。
真優はすでに皿を持っていた。
「疲れた時は甘い物!」
「正論」
「珍しく正論」
「珍しくって何!?」
笑い声が広がる。
イベントの緊張感が嘘みたいだった。
しばらくして。
監督が立ち上がった。
「少しいいか」
自然と全員の視線が集まる。
監督は一枚の資料を持っていた。
その表情はどこか真剣だった。
真優たちも姿勢を正す。
監督は周囲を見渡した。
そして。
ゆっくりと言った。
「まず報告だ」
静かになる会場。
「今日のイベント」
「チケットは完売」
拍手。
歓声。
スタッフたちが喜ぶ。
監督は続ける。
「さらに配信視聴数も想定以上」
真優たちは驚く。
「え?」
「そんなに?」
監督は頷いた。
「作品人気も上昇中だ」
期待が高まる。
何かある。
誰もがそう感じていた。
そして。
監督は少し笑った。
「だから決まった」
真優 「?」
美優 「決まった?」
葵 「何がですか?」
監督は資料を開いた。
その言葉を聞いた瞬間。
部屋の空気が変わった。
「『ツインスターズ・ストーリー』」
「第二期制作決定だ」
数秒。
誰も反応できなかった。
理解が追いつかない。
真優が最初に口を開く。
「……え?」
美優も固まる。
「今……」
葵も珍しく言葉を失った。
監督は笑う。
「だから」
「第二期だ」
その瞬間。
「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」
控室が揺れた。
真優は立ち上がる。
「本当に!?」
「本当だ」
「嘘じゃない!?」
「こんなことで嘘はつかん」
美優は思わず口元を押さえた。
葵も目を見開いている。
夢じゃない。
本当に。
続きができる。
また演じられる。
また仲間と走れる。
またファンに会える。
真優の目から涙が溢れた。
「よかった……」
美優も涙ぐむ。
葵も小さく笑った。
監督は三人を見る。
「おめでとう」
「でも」
三人が顔を上げる。
「ここがゴールじゃない」
真優たちは頷いた。
もちろん分かっている。
これは終わりじゃない。
始まりだ。
もっと大きな舞台へ。
もっと遠くへ。
夢の続きを目指して。
真優は拳を握った。
美優も。
葵も。
同じ気持ちだった。
『ツインスターズ・ストーリー』
第二期。
新たな物語の幕が。
今、上がろうとしていた――。
第83話 完




