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『君の笑顔が可愛すぎで好きだった!』  作者: 優貴(Yukky)


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380/434

第80話「歓声の向こう側」

開演三分前。

ステージ袖。

照明は落ちている。

客席から聞こえてくるざわめき。

その一つひとつが。

確かな熱量を持って耳に届いていた。

真優は両手を握ったり開いたりしていた。

落ち着かない。

心臓の音がうるさい。

自分の鼓動が聞こえる。

「……やばい」

思わず漏れた声。

隣の美優が小さく笑った。

「今さら?」

「今さらだよ!」

「十分前も同じこと言ってた」

「だって緊張するじゃん!」

葵は腕を組みながら前を見ていた。

「二人とも少し静かに」

「葵ちゃんは平気なの?」

「平気じゃない」

即答だった。

真優と美優が同時に振り向く。

「平気じゃないんだ」

「当たり前」

葵は苦笑する。

「足、震えてる」

見ると本当に少しだけ震えていた。

真優は思わず吹き出した。

「葵ちゃんでもそうなるんだ」

「なる」

「安心した」

「どういう意味」

その時。

スタッフが近づいてくる。

「皆さん」

三人の表情が引き締まる。

「間もなく開演です」

会場全体の照明が落ちた。

同時に歓声が大きくなる。

客席の熱量が一気に高まる。

鳥肌が立った。

真優は思わず息を呑む。

美優も。

葵も。

言葉を失う。

ステージの向こうにいる何千人もの観客。

まだ姿は見えない。

それでも分かる。

みんな待っている。

今日という日を。

この瞬間を。


そして。

開演。

重低音のSEが会場に響く。

スクリーンに作品PVが映し出される。

歓声。

拍手。

応援の声。

その全てが会場を揺らした。

舞台袖から見ているだけなのに。

胸が熱くなる。

スタッフが合図を出した。

「お願いします!」

三人は顔を見合わせる。

真優が笑う。

「行こう」

美優が頷く。

「うん」

葵も静かに答える。

「ああ」

そして

ステージへ飛び出した。

「皆さんこんにちはー!!」

会場が爆発した。

大歓声。

拍手。

名前を呼ぶ声。

真優は一瞬だけ呆然とした。

想像以上だった。

圧倒されるほどの熱気。

だが。

次の瞬間。

自然と笑顔になっていた。

「すごーい!!」

客席からさらに歓声。

美優がマイクを持つ。

「本日はありがとうございます!」

拍手。

葵も続く。

「最後まで楽しんでいってください」

歓声。

会場全体が温かかった。

優しかった。

歓迎されている。

それが伝わってきた。


トークコーナー。

司会者との掛け合い。

収録の裏話。

失敗談。

好きなシーン。

話すたびに笑いが起こる。

真優 「実は私、一話の収録で噛みました!」

会場が笑う。

司会者 「いきなり暴露ですね」

美優 「三回噛んでました」

真優 「言わなくていいの!」

さらに笑いが広がる。

葵 「五回だった気がする」

真優 「増えた!?」

観客席が盛り上がる。

緊張はもうなかった。

楽しい。

純粋にそう思えた。


そして。

イベント前半最大の見せ場。

生アフレコ。

会場の照明が少し落ちる。

スクリーンに映像が映る。

静寂。

数千人が息を呑む。

真優はマイクの前に立った。

作品の世界。

キャラクター。

何度も演じてきた。

だから。

もう迷わない。

映像が始まる。

真優が演じる。

美優が応える。

葵が感情をぶつける。

会場は静まり返っていた。

誰一人として声を出さない。

その集中が。

逆に伝わってくる。

そして

クライマックス。

葵の叫び。

美優の涙声。

真優の決意。

全てが重なる。

映像終了。

暗転。

一秒。

二秒。

三秒。

静寂。

そして。

割れんばかりの拍手。

歓声。

スタンディングオベーション。

会場が揺れる。

真優は思わず目を見開いた。

美優も驚いていた。

葵も息を呑んでいる。

司会者が笑う。

「これは凄いですね……!」

拍手はまだ止まらない。

真優は客席を見た。

泣いている人がいた。

笑っている人もいた。

その瞬間。

胸の奥が熱くなった。

努力してきて良かった。

本当に。

心からそう思えた。

だが

イベント最大の山場は。

まだ残っていた。

ライブパート。

三人が夢見てきた舞台。

その幕が。

いよいよ上がろうとしていた。

第80話 完

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