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『君の笑顔が可愛すぎで好きだった!』  作者: 優貴(Yukky)


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第77話「それぞれの不安、それぞれの覚悟」

イベント本番まで、あと二週間。

合同合宿を終えた『ツインスターズ・ストーリー』の現場には、これまでとは違う空気が流れていた。

期待。

緊張。

そして焦り。

順調だからこそ、不安になる。

それは経験の少ない新人声優たちにとって避けられない感情だった。


都内某所。

レッスンスタジオ。

イベント本番を想定した通しリハーサルが行われていた。

「ありがとうございました!」

最後のポーズを決める三人。

音楽が止まる。

数秒の静寂。

先生は手元のメモを見ながら口を開いた。

「良くなってます」

真優の顔が明るくなる。

だが。

「ただし、本番ならまだ七十点です」

その言葉に空気が引き締まった。

真優 「七十点……」

美優 「厳しいですね」

先生 「期待しているからです」

葵 「足りない部分は?」

先生は迷わず答えた。

「余裕です」

三人は顔を見合わせた。

先生 「皆さん技術はあります」

先生 「でも成功させたい気持ちが強すぎる」

先生 「それが表情や動きの硬さに出ている」

真優は思わず黙り込む。

図星だった。

イベントのことを考えない日はなかった。

寝る前も。

朝起きても。

頭の中にあるのは本番のことばかり。

先生 「楽しんでください」

先生 「皆さん自身が楽しめなければ、お客さんも楽しめません」


レッスン終了後。

帰り道。

三人は駅へ向かって歩いていた。

夕方の空は淡いオレンジ色に染まっている。

珍しく誰も話さなかった。

先に口を開いたのは真優だった。

「私さ」

美優 「うん」

真優 「ちょっと怖い」

葵が横を見る。

真優は苦笑していた。

「失敗したらどうしようって」

美優も静かに頷く。

「私も」

葵 「……」

真優 「葵ちゃんは?」

少しの沈黙。

そして。

葵 「怖いよ」

即答だった。

真優と美優が驚く。

葵 「失敗したくない」

葵 「期待も裏切りたくない」

葵 「だから怖い」

夕風が吹く。

葵は空を見上げた。

「でも」

真優 「?」

葵 「怖くない夢なんて、本気じゃないと思う」

真優は目を見開いた。

美優も小さく笑う。

「それ、名言かも」

葵 「違う」

真優 「いや、かっこいい」

葵 「やめろ」

耳が少し赤くなっていた。


その夜。

真優は自宅のベッドに座っていた。

机の上にはイベント台本。

何度も読み込んだページ。

覚えているはずなのに。

また開いてしまう。

スマホが震えた。

グループチャット。

美優 『起きてる?』

真優 『起きてる!』

葵 『私も』

真優 『珍しい!』

美優 『眠れない』

葵 『同じ』

真優は思わず笑った。

やっぱりみんな同じだった。

真優 『ねえ』

美優 『?』

真優 『成功するかな』

既読が付く。

数秒後。

美優 『成功させる』

続いて。

葵 『成功するまでやるだけ』

短い文章。

でも力強かった。

真優は画面を見つめる。

胸の奥が少し軽くなる。

真優 『うん』

真優 『絶対成功させよう』

美優 『もちろん』

葵 『当たり前』

画面越しでも伝わる。

二人の覚悟。

真優はスマホを胸に抱えた。

一人じゃない。

そう思えた。


イベント当日まで残り十三日。

期待は膨らみ続ける。

不安も消えない。

それでも。

夢を追う者は立ち止まらない。

なぜなら。

その先に見たい景色があるから。

三人はまだ知らない。

このイベントが。

彼女たちの運命を大きく動かす一日になることを。

第77話 完

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