第66話「一ノ瀬葵の決意」
アルバム発売から数日後。
『未来へのハーモニー』
予想以上のヒット。
全国ツアー追加公演決定。
Twinkle Twinsは順調だった。
その頃。
都内のレコーディングスタジオ。
一人の少女がニュースを見ていた。
一ノ瀬葵。
真優と美優のライバル。
葵
「すごいな……」
スマホには。
Twinkle Twins特集記事。
全国ツアー。
アルバムヒット。
武道館計画。
話題は尽きない。
マネージャー
「気になる?」
葵
「少し」
マネージャー
「ライバルだもんね」
葵
「ライバル……か」
静かに画面を見つめる。
最初は悔しかった。
オーディションで負けた。
主人公役を逃した。
その時は。
正直。
認めたくなかった。
でも。
今は違う。
葵
「負けたくないな」
マネージャー
「良い顔になった」
葵
「そうですか?」
マネージャー
「前は勝ち負けばかり見てた」
葵
「……」
マネージャー
「今は前を見てる」
葵は少し笑った。
その日の夜。
自宅。
机の上には。
台本。
歌詞。
雑誌。
たくさんの資料。
葵
「まだ足りない」
演技。
歌。
ダンス。
全部。
もっと上手くなりたい。
もっと成長したい。
真優や美優に負けないためじゃない。
自分自身の夢のために。
すると。
スマホが鳴った。
画面には。
真優。
葵
「え?」
電話に出る。
葵
「もしもし」
真優
『葵ちゃん!』
葵
「元気だね」
真優
『アルバム聴いた?』
葵
「聴いた」
真優
『どうだった!?』
葵
「良かった」
真優
『やったー!』
電話の向こうで大喜びしている。
葵は思わず笑った。
葵
「相変わらずだね」
真優
『褒められたら嬉しいもん!』
少し沈黙。
そして。
葵
「ねぇ」
真優
『ん?』
葵
「私」
葵
「次のアニメで主演を狙う」
真優
『おお!』
葵
「今度は負けない」
真優
『いいね!』
葵
「宣戦布告なのに」
真優
『嬉しいよ!』
葵
「変わってる」
真優
『だって葵ちゃんライバルだもん!』
真優
『ライバルが強い方が燃える!』
葵
「……」
少しだけ。
胸が軽くなった。
ライバル。
敵ではない。
お互いを高め合う存在。
そんな気がした。
電話を切った後。
葵は窓の外を見る。
東京の夜景。
葵
「待ってなさい」
誰に向けた言葉か。
自分でも分からない。
真優か。
美優か。
それとも。
未来の自分か。
でも。
一つだけ確かなことがある。
一ノ瀬葵もまた。
夢へ向かって走り続けている。
そして数日後。
芸能ニュース。
『大型アニメ企画始動』
『主演オーディション開催』
その記事を見た。
真優。
美優。
そして。
葵。
三人の視線が。
同じ場所へ向けられていた。
第66話 完




