第63話「離れていても」
全国ツアーまで残り2か月。
真優と美優は毎日忙しかった。
レッスン。
収録。
取材。
アルバム制作。
気づけば。
大阪にいた頃よりも忙しい日々になっていた。
夜。
マンション。
真優
「ふぅ……」
美優
「疲れた」
珍しく二人とも静かだった。
真優
「ねぇ」
美優
「ん?」
真優
「最近さ」
少し言いづらそうにする。
真優
「将信と全然話せてない」
美優
「……」
真優
「電話も減ったし」
美優
「実は私も」
真優
「将規くん?」
美優
「うん」
忙しい。
それは分かっている。
でも。
だからこそ不安になる。
真優
「嫌われてないかな」
美優
「考えすぎ」
真優
「でもさ」
美優
「じゃあ電話したら?」
真優
「……する」
美優
「私も」
それぞれ部屋へ戻る。
真優 × 将信
スマホを握る。
真優
(緊張する)
付き合っているのに。
なぜか緊張した。
プルルル。
数秒後。
将信
『もしもし』
真優
「もしもし!」
将信
『久しぶりだな』
その一言で。
少し安心した。
真優
「忙しかった?」
将信
『まあな』
真優
「そっか」
少し沈黙。
すると。
将信
『何かあったか?』
真優
「え?」
将信
『声が違う』
真優
「分かるの?」
将信
『分かる』
真優の胸が少し熱くなる。
真優
「ねぇ」
将信
『うん』
真優
「私さ」
真優
「最近不安だった」
将信
『……』
真優
「全然会えないし」
真優
「話せないし」
真優
「遠くなった気がして」
言った瞬間。
少し涙が出た。
すると。
将信
『馬鹿』
真優
「え?」
将信
『遠くなってない』
真優
「……」
将信
『俺は変わらない』
将信
『お前も変わってない』
真優
「でも」
将信
『今も好きだ』
真優
「!」
将信
『それじゃダメか?』
真優
「……」
真優
「ずるい」
将信
『何が』
真優
「嬉しい」
電話の向こうで。
将信が少し笑った気がした。
美優 × 将規
一方その頃。
美優も電話していた。
将規
『もしもし』
美優
「こんばんは」
将規
『久しぶり』
美優
「うん」
将規
『元気か?』
美優
「元気」
将規
『嘘だな』
美優
「え」
将規
『声で分かる』
美優
「……」
将規
『何か悩んでる』
美優は少し笑った。
真優と同じだ。
この人も。
ちゃんと分かっている。
美優
「少しだけ」
将規
『聞こうか』
美優
「最近」
美優
「遠距離恋愛って難しいなって」
将規
『ああ』
美優
「会いたい時に会えない」
美優
「声も聞けない日がある」
将規
『そうだな』
美優
「だから少し不安だった」
静かな沈黙。
そして。
将規
『俺もだ』
美優
「え?」
将規
『俺も会いたい』
美優
「……」
将規
『でも』
将規
『頑張ってるの知ってるから』
将規
『邪魔したくなかった』
美優
「将規くん」
将規
『だから』
将規
『ツアー大阪公演』
美優
「うん」
将規
『最前列にいる』
美優
「ふふっ」
将規
『絶対に』
美優
「見つける」
将規
『約束な』
美優
「約束」
電話を切る。
真優の部屋。
美優の部屋。
それぞれ。
少しだけ泣いた。
でも。
不安は消えていた。
離れていても。
気持ちは変わらない。
それを確認できたから。
全国ツアー。
その先の未来。
もっと頑張れる。
大切な人が応援してくれているから。
第63話 完




