第61話「完成間近のアルバム」
大阪から東京へ戻った翌週。
全国ツアーまで残り3か月。
真優
「ついに……」
美優
「ついにだね」
机の上。
ノートが何冊も積まれている。
歌詞。
メロディー案。
ボツ案。
修正版。
何十回も書き直した。
何十回も弾き直した。
その集大成。
真優
「完成した!」
美優
「たぶん」
真優
「たぶん!?」
美優
「100%はない」
真優
「確かに」
今日。
二人は初めて作った曲をプロデューサーへ聴いてもらう。
事務所。
レコーディングルーム。
担当マネージャー。
音楽プロデューサー。
作曲講師。
全員が集まっていた。
真優
「緊張する」
美優
「オーディション並み」
真優
「それ以上かも」
プロデューサー
「準備はいいですか?」
真優
「はい!」
美優
「お願いします」
再生ボタンを押す。
流れ始める曲。
タイトルは。
『未来へのハーモニー』
双子の夢。
仲間たちとの思い出。
大阪から東京へ来た日。
初ライブ。
ファンとの出会い。
全部が詰まっていた。
曲が終わる。
静寂。
真優
「……」
美優
「……」
数秒。
いや。
数分にも感じた。
そして。
プロデューサー
「なるほど」
真優
「ど、どうですか」
プロデューサー
「技術的にはまだ未熟です」
真優
「ですよね」
美優
「予想通り」
プロデューサー
「ですが」
二人が顔を上げる。
プロデューサー
「この曲には」
プロデューサー
「二人しか出せないものがあります」
真優
「!」
美優
「……」
プロデューサー
「上手い曲は作れます」
プロデューサー
「でも」
プロデューサー
「この物語は二人にしか書けません」
静かに微笑む。
プロデューサー
「採用しましょう」
真優
「え?」
美優
「本当に?」
プロデューサー
「はい」
真優
「やったーーー!!」
思わず立ち上がる。
担当マネージャー
「落ち着いてください」
真優
「無理です!」
美優も珍しく笑っていた。
作曲講師
「頑張りましたね」
真優
「先生!」
美優
「ありがとうございました」
講師
「最初は眠くなる曲でしたから」
真優
「それ言う?」
部屋が笑いに包まれる。
その後。
プロデューサー
「ただし」
真優
「はい!」
プロデューサー
「アルバムのリード曲にします」
真優
「……」
美優
「……」
プロデューサー
「全国ツアーでも歌ってください」
真優
「ええええ!?」
美優
「責任重大」
自分たちで作った曲。
それが。
アルバムの中心曲になる。
嬉しい。
でも。
同じくらい怖い。
プロデューサー
「自信を持ちなさい」
プロデューサー
「これは二人の歌です」
真優
「……はい!」
美優
「頑張ります」
夜。
マンション。
真優
「採用されたね」
美優
「された」
真優
「夢みたい」
美優
「うん」
窓の外には東京の夜景。
東京へ来たばかりの頃は。
こんな未来。
想像もしていなかった。
でも今は。
少しずつ。
夢が現実になっている。
全国ツアーまで残り3か月。
次はいよいよ。
アルバムレコーディング。
二人の想いを歌に乗せる日が近づいていた。
第61話 完




