第44話「初めての仕事」
東京へ来て二か月。
レッスン漬けの日々。
真優
「疲れたぁ……」
美優
「まだレッスン終わってない」
真優
「現実を見せないで」
その時。
担当マネージャー
「真優さん、美優さん」
二人
「はい?」
マネージャー
「少しお話があります」
真優
「まさか」
美優
「追加レッスン?」
マネージャー
「違います」
真優
「よかった」
会議室へ移動。
真優
「何だろう」
美優
「分からない」
すると。
マネージャーが一枚の資料を置いた。
マネージャー
「お二人に仕事が決まりました」
真優
「え?」
美優
「仕事?」
マネージャー
「はい」
二人は固まる。
仕事。
つまり。
芸能活動。
真優
「本当に?」
マネージャー
「本当です」
真優
「うそじゃない?」
マネージャー
「仕事の報告で嘘はつきません」
真優
「ですよね」
美優が資料を見る。
そこには。
『テレビアニメ 収録協力キャスト』
と書かれていた。
美優
「アニメ?」
真優
「アニメ!?」
マネージャー
「まだメインではありません」
マネージャー
「モブキャラクター数役です」
真優
「モブでもアニメだよ!」
美優
「初仕事」
二人の心臓が高鳴る。
昔から憧れていた世界。
テレビで見ていた世界。
その一歩目だった。
数日後。
アフレコスタジオ。
真優
「うわぁ……」
美優
「本物のスタジオ」
ガラスの向こう。
マイク。
台本。
ヘッドホン。
全部が憧れだった。
真優
「夢みたい」
美優
「うん」
すると。
スタッフ
「準備お願いします」
真優
「はい!」
緊張で声が裏返る。
美優
「落ち着いて」
収録開始。
真優の役。
『クラスメイトA』
セリフ。
「おはよう!」
たった一言。
でも。
真優にとっては特別だった。
収録後。
真優
「終わった……」
美優
「お疲れ」
続いて美優。
『女子生徒B』
セリフ。
「そうなんだ」
短い。
本当に短い。
だけど。
二人とも全力だった。
収録終了。
スタッフ
「お疲れ様でした」
真優
「ありがとうございました!」
美優
「ありがとうございました」
スタジオを出る。
夕方。
東京の街。
真優
「一言だったね」
美優
「一言だった」
真優
「でも」
美優
「うん」
真優
「嬉しかった」
美優
「私も」
たった一言。
たった数秒。
だけど。
確かに。
声優として仕事をした。
夢への第一歩だった。
夜。
マンション。
雷斗
「どうだった」
真優
「アニメ出た!」
雷斗
「まだ放送前だろ」
真優
「細かい」
美優
「楽しかった」
雷斗
「それならよかった」
真優
「次はもっと大きい役を取る」
美優
「頑張ろう」
雷斗は笑う。
二人の目は。
東京へ来た頃よりも。
ずっと輝いていた。
夢はまだ遠い。
でも。
確実に近づいている。
双子はそう感じていた。
第44話 完




