第31話「それぞれの夢 ― 将規編 ―」
進路希望調査提出日。
教室。
玲美愛
「ついに最後!」
龍太郎
「まだやるのか」
玲美愛
「当然!」
真優
「次は将規だね」
美優
「気になる」
賢太郎
「確かに」
玲美菜
「聞いたことない」
全員の視線が将規に集まる。
将規
「なんだよ」
玲美愛
「将来の夢!」
将規
「普通だぞ」
玲美愛
「普通じゃない人ほどそう言う!」
龍太郎
「偏見だろ」
教室が笑いに包まれる。
将規は少し考えた。
そして。
将規
「教師かな」
全員
「え?」
意外そうな顔。
真優
「先生?」
美優
「意外かも」
将規
「そうか?」
賢太郎
「もっと違うと思ってた」
玲美菜
「スポーツとか」
龍太郎
「警察とか」
玲美愛
「ヒーローとか」
将規
「最後は違うだろ」
再び笑いが起こる。
昼休み。
屋上。
将規は一人で空を見ていた。
青空。
少し冷たい風。
すると。
真優
「いた」
美優
「やっぱり」
二人がやって来る。
将規
「どうした」
真優
「教師になりたい理由」
美優
「聞いてなかった」
将規
「そんな大した話じゃない」
真優
「聞きたい」
美優
「うん」
将規は少し困った顔をする。
そして。
将規
「中学の時な」
二人
「うん」
将規
「進路とか人間関係とか」
将規
「結構悩んでたんだ」
真優
「そうだったんだ」
将規
「ああ」
将規は笑う。
将規
「その時の担任が」
将規
「ずっと話聞いてくれた」
美優
「……」
将規
「答えを押し付けるんじゃなくて」
将規
「一緒に考えてくれた」
真優
「いい先生だね」
将規
「ああ」
その先生のおかげで。
前を向けた。
頑張ろうと思えた。
だから。
将規
「俺もそういう先生になりたい」
真優と美優は顔を見合わせる。
そして。
真優
「絶対向いてる」
将規
「そうか?」
美優
「うん」
真優
「困ってる人放っておけないし」
美優
「面倒見いいし」
将規
「そんなことない」
真優
「ある」
美優
「ある」
息ぴったり。
将規は苦笑する。
放課後。
進路希望調査。
将規はペンを握る。
そして。
『教師』
迷いなく書いた。
まだ先の未来。
でも。
少しだけ楽しみだった。
誰かの力になれる。
そんな大人になりたい。
帰り道。
真優
「将規先生かぁ」
美優
「想像できる」
将規
「やめろ」
真優
「絶対人気出る」
美優
「生徒に好かれそう」
将規
「気が早い」
三人は笑った。
夕焼け空の下。
それぞれが夢を抱えて歩いていく。
弁護士。
保育士。
モデル。
声優アイドル。
そして教師。
まだ遠い未来。
だけど。
その夢は確かに彼らの中で輝いていた。
第31話 完




