第29話「それぞれの夢 ― 龍太郎編 ―」
進路希望調査週間。
昼休み。
玲美愛
「次は龍太郎!」
龍太郎
「何がだ」
玲美愛
「将来の夢!」
真優
「確かに気になる」
美優
「聞いたことないかも」
将規
「龍太郎って秘密主義だしな」
龍太郎
「別に隠してない」
玲美愛
「じゃあ教えて!」
全員の視線が集まる。
龍太郎
「……」
少しだけ考える。
そして。
龍太郎
「芸能関係」
全員
「え?」
玲美愛
「芸能人!?」
龍太郎
「ああ」
教室がざわつく。
将規
「意外だな」
真優
「すごく意外」
美優
「静かなタイプだから」
龍太郎
「よく言われる」
玲美愛
「でも似合うかも」
将規
「確かに」
龍太郎は身長が高い。
185cm。
学校でもかなり目立つ。
真優
「モデルとか?」
龍太郎
「どちらかと言えば」
玲美愛
「やっぱり!」
放課後。
帰り道。
将規
「本気なのか?」
龍太郎
「ああ」
将規
「理由は?」
龍太郎
「家族の影響」
将規
「家族?」
龍太郎
「うち、少しだけ有名なんだ」
将規
「何が?」
龍太郎
「親父と姉」
将規
「へ?」
龍太郎
「モデル」
将規
「マジか」
龍太郎
「マジだ」
将規は驚いた。
そういえば。
龍太郎は顔立ちも整っている。
身長も高い。
言われてみれば納得だった。
その日の夜。
龍太郎の家。
リビング。
テレビにはファッション番組。
そこに映る女性。
龍太郎の姉だった。
姉
「おかえり」
龍太郎
「ただいま」
姉
「進路決めた?」
龍太郎
「ああ」
姉
「芸能関係?」
龍太郎
「モデルかな」
姉は笑った。
姉
「向いてると思う」
龍太郎
「そうか?」
姉
「その身長は武器だよ」
185cm。
昔はコンプレックスだった。
周りより大きすぎたから。
でも。
家族は違った。
父も姉も言った。
「それは才能だ」
と。
龍太郎
「まだ分からない」
姉
「最初はみんなそう」
龍太郎
「……」
姉
「でも挑戦しなきゃ始まらない」
龍太郎は静かに頷く。
翌日。
学校。
進路希望調査。
龍太郎はペンを走らせる。
『モデル・芸能活動』
少しだけ緊張した。
でも。
不思議と後悔はなかった。
昼休み。
玲美愛
「書いた!?」
龍太郎
「ああ」
玲美愛
「モデル!」
龍太郎
「そうだ」
玲美愛
「絶対なれる!」
龍太郎
「根拠は?」
玲美愛
「かっこいいから!」
真優
「単純」
美優
「でも分かる」
将規
「確かにな」
龍太郎
「……」
少し照れる。
玲美愛
「顔赤い!」
龍太郎
「赤くない」
教室に笑いが広がった。
夢はまだ遠い。
けれど。
その一歩は確かに踏み出した。
高い身長も。
家族から受け継いだ想いも。
全部背負って。
龍太郎は未来へ進んでいく。
第29話 完




