第28話「それぞれの夢 ― 玲美菜編 ―」
進路希望調査週間。
教室。
玲美愛
「みんな夢あるのすごくない?」
龍太郎
「お前は」
玲美愛
「これから探す!」
龍太郎
「頑張れ」
真優
「応援はする」
美優
「成功するかは別」
玲美愛
「ひどい!」
教室に笑いが広がる。
その中で。
玲美菜は進路希望調査の紙を見つめていた。
将来の夢。
答えは決まっている。
でも。
少し複雑だった。
放課後。
帰り道。
賢太郎
「まだ書いてないのか?」
玲美菜
「うん」
賢太郎
「珍しいな」
玲美菜
「考え事」
賢太郎
「夢か?」
玲美菜
「そう」
賢太郎は隣を歩く。
無理に聞かない。
その優しさが玲美菜には心地良かった。
玲美菜
「私ね」
賢太郎
「ん?」
玲美菜
「保育士になりたい」
賢太郎
「保育士か」
玲美菜
「うん」
賢太郎
「似合うと思う」
玲美菜
「本当に?」
賢太郎
「ああ」
玲美菜は少し笑った。
その日の夜。
玲美菜の家。
姉の玲緒菜がリビングにいた。
玲緒菜
「進路希望調査どうだった?」
玲美菜
「書くよ」
玲緒菜
「何になるの?」
玲美菜
「保育士」
玲緒菜
「へぇ」
少し驚いていた。
玲美菜
「意外?」
玲緒菜
「少し」
玲美菜
「私」
玲美菜は少し考える。
玲美菜
「教師にはなりたくない」
玲緒菜
「おい」
即答だった。
玲美菜
「だって大変そう」
玲緒菜
「それは否定できない」
玲美菜
「毎日忙しいし」
玲緒菜
「それも否定できない」
玲美菜
「たまに怖いし」
玲緒菜
「それは余計」
二人とも笑った。
少し沈黙。
玲緒菜
「でも」
玲美菜
「?」
玲緒菜
「教師が嫌いってわけじゃないんだろ」
玲美菜
「うん」
玲緒菜
「知ってる」
玲美菜は頷く。
教師にはなりたくない。
でも。
姉は尊敬していた。
どんなに疲れていても。
生徒のことを考える。
悩んでいる子がいれば話を聞く。
泣いている子がいれば寄り添う。
そんな姿をずっと見てきた。
玲美菜
「お姉ちゃんはすごいと思う」
玲緒菜
「珍しく褒めるな」
玲美菜
「本音だから」
玲緒菜
「……」
少しだけ照れくさそうだった。
玲美菜
「だから」
玲美菜
「私は保育士になる」
玲緒菜
「理由は?」
玲美菜
「子どもが好きだから」
玲美菜
「笑顔を守れる仕事がしたい」
玲緒菜は優しく微笑む。
玲緒菜
「いい夢だな」
玲美菜
「うん」
翌日。
学校。
進路希望調査。
玲美菜は迷わず書いた。
『保育士』
その文字を見て。
自然と笑顔になる。
昼休み。
賢太郎
「書いたか?」
玲美菜
「うん」
賢太郎
「保育士」
玲美菜
「そう」
賢太郎
「絶対向いてる」
玲美菜
「そうかな」
賢太郎
「ああ」
真優
「優しいし」
美優
「面倒見いいし」
玲美愛
「子どもに人気出そう!」
龍太郎
「それは分かる」
みんなの言葉に。
玲美菜は少し照れた。
夢はまだ遠い。
でも。
その未来を思い描くと。
少しだけ楽しみだった。
第28話 完




