第18話「それぞれの夜」
文化祭まで、あと四日。
月曜日。
放課後。
文化祭準備は最終段階に入っていた。
教室の装飾はほぼ完成。
あとは細かい調整だけ。
玲美愛 「完成間近ー!」
龍太郎 「騒ぐ元気だけは最後まであるな」
玲美愛 「褒め言葉?」
龍太郎 「たぶん違う」
教室には笑い声が響く。
しかし。
将規の胸の中は静かではなかった。
真優。
美優。
文化祭まであと四日。
答えを出す日は近い。
帰り道。
真優と美優が並んで歩いていた。
久しぶりの双子だけの時間。
真優 「緊張する」
美優 「分かる」
真優 「あと四日だよ」
美優 「早いね」
真優は空を見上げる。
夕焼けが広がっていた。
真優 「もしさ」
美優 「うん」
真優 「私が選ばれたら怒る?」
美優は少し驚く。
そして。
静かに首を振った。
美優 「怒らない」
真優 「本当に?」
美優 「悔しいとは思う」
真優 「うん」
美優 「でも怒らない」
真優は少し安心したように笑う。
真優 「私も」
美優 「?」
真優 「美優が選ばれても怒らない」
二人は立ち止まる。
真優 「泣くけどね」
美優 「私も泣く」
そして。
二人とも笑った。
双子だからこそ。
誰よりも相手の気持ちが分かる。
だからこそ苦しい。
その頃。
真衣の家。
真太郎 「まだ起きてるか」
真衣 「起きてる」
部屋のドアが開く。
真太郎 「文化祭近いな」
真衣 「うん」
真太郎はベッドの近くに座る。
真太郎 「将規くん」
真衣 「!」
真太郎 「良い子だな」
真衣 「またその話?」
真太郎 「気になるからな」
真衣 「兄ちゃん暇なの?」
真太郎 「失礼だな」
真衣は笑う。
真太郎 「でも」
真衣 「?」
真太郎 「文化祭終わったら」
真太郎 「たぶん色々変わるぞ」
真衣は黙る。
真太郎 「後悔だけはするな」
静かな声だった。
真衣 「……うん」
返事はした。
でも。
その胸の中には説明できない感情があった。
一方。
将規の家。
将規は机に向かっていた。
スマホには文化祭の連絡。
真優との写真。
美優とのメッセージ。
たくさんの思い出。
一将が部屋に入る。
一将 「まだ起きてたか」
将規 「眠れない」
一将 「だろうな」
将規は苦笑する。
一将 「あと四日」
将規 「ああ」
一将 「怖いか」
将規 「怖い」
一将は頷く。
一将 「でも」
将規 「?」
一将 「お前の顔」
将規 「何」
一将 「最初より迷ってない」
将規は驚く。
本当にそうなのだろうか。
一将 「自分では気付いてないだけだ」
将規 「……」
一将 「答えは近いぞ」
そう言って部屋を出ていく。
一人になった将規。
窓の外を見る。
夜空。
文化祭まで、あと四日。
それぞれが。
それぞれの想いを抱えながら。
運命の日へ近付いていく。
そして将規の心の中では。
もうすぐ。
一つの答えが形になろうとしていた。
第18話 完




