第16話「犬猿の再会」
文化祭まで、あと六日。
土曜日。
文化祭準備も最終段階。
学校には休日にも関わらず多くの生徒が集まっていた。
校門前。
真太郎は飲み物を片手に歩いていた。
真太郎 「懐かしいな」
卒業して数年。
母校の空気はほとんど変わっていなかった。
その時だった。
向こうから一人の男性が歩いてくる。
真太郎 「……は?」
相手も立ち止まる。
兼次郎 「お前」
真太郎 「兼次郎」
空気が凍った。
数秒。
沈黙。
兼次郎 「なんでいる」
真太郎 「それはこっちの台詞だ」
兼次郎 「文化祭だ」
真太郎 「俺もだ」
バチバチ。
目が合う。
火花が散りそうだった。
偶然通りかかった将規。
将規 「あれ?」
真衣 「どうしたの?」
将規 「なんか空気が怖い」
真優 「誰?」
美優 「知らない」
玲美愛 「修羅場の予感!」
龍太郎 「絶対近付くな」
真太郎 「相変わらず嫌な顔だな」
兼次郎 「お前こそ」
真太郎 「会いたくなかった」
兼次郎 「奇遇だな」
将規 「知り合いなんですか?」
真太郎 「高校時代の腐れ縁」
兼次郎 「犬猿の仲だ」
真太郎 「同意するのが腹立つ」
玲美愛 「何があったの!?」
龍太郎 「聞くな」
真優 「気になる」
美優 「すごく気になる」
真太郎はため息をつく。
真太郎 「高校時代」
兼次郎 「同じクラスだった」
真太郎 「最悪だった」
兼次郎 「同感だ」
真優 「仲良かったんじゃ」
二人同時。
真太郎・兼次郎 「絶対にない」
周囲は少し引いた。
玲美愛 「理由は?」
真太郎 「こいつが嫌いだった」
兼次郎 「お前もだろ」
真太郎 「もちろん」
しかし。
真衣が何かに気付く。
真衣 「待って」
真太郎 「?」
真衣 「それだけじゃないよね」
兼次郎が苦笑する。
兼次郎 「鋭いな」
真太郎 「余計なこと言うな」
玲美愛 「何!?何なの!?」
龍太郎 「嫌な予感しかしない」
兼次郎 「高校時代」
真太郎 「……」
兼次郎 「好きな人がいた」
真優 「えっ」
美優 「恋愛?」
兼次郎 「ああ」
真太郎 「最悪だ」
兼次郎 「しかも」
真太郎 「言うな」
兼次郎 「同じ相手だった」
全員。
「えええええ!?」
玲美愛 「恋のライバル!?」
龍太郎 「そっちか!」
将規 「誰だったんですか」
真太郎は顔をしかめる。
兼次郎は面白そうに笑う。
兼次郎 「結衣」
将規 「え?」
真優 「結衣さん!?」
美優 「一将さんの恋人の?」
兼次郎 「そうだ」
真太郎 「思い出したくもない」
兼次郎 「結局」
真太郎 「……」
兼次郎 「一将に持っていかれた」
沈黙。
玲美愛
「一将さん強すぎない!?」
龍太郎
「全部持っていったな」
真太郎
「今でも納得してない」
兼次郎
「俺もだ」
真太郎
「お前だけには言われたくない」
兼次郎
「俺もお前には言われたくない」
再び火花。
将規
「大人ですよね?」
真衣
「精神年齢は高校生」
真優
「仲良し?」
真太郎・兼次郎
「違う!」
その声が校門前に響いた。
玲美愛は大爆笑。
龍太郎は頭を抱える。
将規は呆れた。
真衣はため息。
しかし。
そんな騒がしい時間の中でも。
文化祭当日は確実に近づいている。
あと六日。
将規の恋。
そして周囲の人たちの想いもまた。
少しずつ交差し始めていた。
第16話 完




