第11話「初対面」
文化祭まで、あと十一日。
水曜日。
放課後。
文化祭準備。
教室は今日も慌ただしかった。
真優 「将規ー!」
将規 「今度は何だ!」
真優 「脚立!」
美優 「こっちは段ボール」
将規 「一人ずつ来い!」
玲美愛 「人気者だねぇ」
龍太郎 「便利屋とも言う」
将規 「後で覚えてろ」
教室に笑い声が響く。
準備終了後。
校門前。
将規が帰ろうとしていると。
真衣 「将規」
将規 「ん?」
真衣が駆け寄ってくる。
真衣 「ちょっといい?」
将規 「どうした」
真衣 「兄ちゃん迎えに来てる」
将規 「ああ、帰省したって言ってたな」
真衣 「そう」
少し迷う。
そして。
真衣 「紹介する」
将規 「は?」
校門の外。
そこには一人の青年が立っていた。
落ち着いた雰囲気。
柔らかな笑顔。
真太郎だった。
真衣 「兄ちゃん」
真太郎 「ん?」
真衣 「この人」
将規 「石川将規です」
真太郎 「真衣の兄の真太郎です」
二人は軽く頭を下げる。
真太郎 「話は聞いてるよ」
将規 「何をですか」
真衣 「聞かなくていい」
真太郎 「文化祭頑張ってるって」
将規 「ああ、そっちですか」
真衣 「他に何があるの」
将規 「いや別に」
真衣は少し怪しそうな顔をした。
真太郎 「真衣がよく話してる」
真衣 「話してない!」
真太郎 「してる」
真衣 「してない!」
将規 「どっちなんですか」
真太郎 「してる」
真衣 「兄ちゃん!」
真太郎は楽しそうだった。
少し歩きながら話す。
真太郎 「将規くんは文化祭実行委員?」
将規 「はい」
真太郎 「大変そうだ」
将規 「かなり」
真太郎 「真衣は?」
将規 「ちゃんと働いてます」
真衣 「何その保護者みたいな言い方」
将規 「事実だろ」
真衣 「むぅ」
真太郎は二人を見ていた。
静かに。
観察するように。
駅前。
真太郎 「ここで大丈夫」
将規 「はい」
真衣 「また明日」
将規 「おう」
別れようとした時。
真太郎が呼び止めた。
真太郎 「将規くん」
将規 「はい?」
真太郎 「文化祭、楽しみにしてる」
将規 「頑張ります」
真太郎 「うん」
穏やかな笑顔だった。
帰り道。
真太郎と真衣。
真衣 「何?」
真太郎 「何が」
真衣 「さっきから」
真太郎 「別に」
真衣 「嘘」
真太郎は少し笑う。
真太郎 「いい子だな」
真衣 「……」
真太郎 「真面目だし」
真衣 「そうだね」
真太郎 「優しいし」
真衣 「そうだね」
真太郎 「真衣」
真衣 「何」
真太郎 「好きなのか?」
真衣 「ぶっ!?」
盛大にむせた。
真衣 「違う!」
真太郎 「そうか」
真衣 「違うから!」
真太郎 「分かった分かった」
全然分かっていない顔だった。
その夜。
真衣の部屋。
ベッドに寝転ぶ。
兄の言葉が頭から離れない。
――好きなのか?
真衣 「違うって……」
そう呟く。
でも。
少しだけ。
返事に迷った自分がいた。
一方。
将規の部屋。
今日のことを思い出していた。
真太郎。
優しそうな人だった。
そして。
真衣のことを本当に大事にしている兄だった。
将規 「いい兄ちゃんだな」
小さく呟く。
文化祭まで、あと十一日。
恋の結末へ向かう時間は。
さらに少しずつ。
近づいていた。
第11話 完




