第9話「兄の帰還」
文化祭まで、あと十三日。
月曜日。
朝のホームルーム。
先生 「連絡事項は以上だ」
生徒たちが一斉に動き始める。
そんな中。
真衣はスマホを見て固まっていた。
メッセージが一件。
兄からだった。
『文化祭の前日に帰る』
真衣 「本当に帰ってくるんだ……」
思わず小さく呟く。
昼休み。
中庭。
真衣はベンチに座っていた。
そこへ将規がやって来る。
将規 「珍しいな」
真衣 「将規こそ」
将規 「たまたま」
真衣 「私も」
二人は少し笑う。
将規 「何見てたんだ?」
真衣 「兄からのメッセージ」
将規 「ああ」
以前話していた。
大学進学で離れて暮らしている兄。
文化祭に帰ってくる予定だと。
将規 「楽しみか?」
真衣 「楽しみ」
即答だった。
でも。
どこか複雑そうでもある。
将規 「何か不安そうだな」
真衣 「鋭い」
将規 「最近みんな俺より鋭い」
真衣 「それは将規が分かりやすすぎる」
将規 「ひどい」
真衣は少し笑った。
真衣 「兄ね」
将規 「うん」
真衣 「昔から何でも見抜くの」
将規 「へえ」
真衣 「嘘ついたらすぐバレる」
将規 「怖いな」
真衣 「怖い」
本気だった。
真衣 「だから」
将規 「?」
真衣 「今の私を見たら色々聞かれそう」
将規 「例えば?」
真衣は少し黙る。
そして。
真衣 「秘密」
将規 「ずるい」
真衣 「知ってる」
二人は笑った。
放課後。
文化祭準備。
今日は教室の装飾。
真優 「将規ー」
将規 「何だ」
真優 「届かない」
高い場所の飾り。
将規は脚立を持っていく。
すると。
美優も来る。
美優 「こっちもお願い」
将規 「一人ずつ!」
真優 「早い者勝ち」
美優 「それは違う」
また言い合いが始まる。
将規は思わず苦笑した。
玲美愛 「見て」
龍太郎 「うん」
玲美愛 「もう夫婦漫才」
龍太郎 「三人でな」
玲美愛 「文化祭終わったら寂しくなりそう」
龍太郎 「それはある」
二人は少しだけ真面目な顔になる。
夕方。
帰り道。
真優と美優。
双子だけで歩いていた。
真優 「あと十三日」
美優 「数えてた?」
真優 「少し」
美優 「私も」
苦笑する。
真優 「ねえ」
美優 「うん」
真優 「怖い?」
美優 「怖い」
即答。
真優も頷く。
真優 「私も」
美優 「知ってる」
真優 「でもさ」
美優 「?」
真優 「最後まで頑張ろう」
美優は少し驚く。
そして。
静かに笑った。
美優 「うん」
同じ頃。
新幹線の中。
一人の青年が窓の外を眺めていた。
真衣の兄。
数年ぶりの帰省。
スマホには妹から送られてきた文化祭の写真。
青年 「変わったな」
小さく笑う。
そして。
もう一枚の写真を見る。
そこには。
将規たち数人が写っていた。
青年 「……なるほど」
意味深な一言。
彼はまだ知らない。
文化祭がただの学校行事ではないことを。
そして。
妹が抱えている想いも。
文化祭まで、あと十三日。
新たな人物が。
物語へ近づいていた。
第9話 完




