第100話「動き出す真衣」
文化祭まで、あと二十二日。
月曜日。
朝の教室。
将規が席に着くと、玲美愛がニヤニヤしながら近づいてきた。
玲美愛 「土曜日どうだった?」
将規 「何がだよ」
玲美愛 「文化祭準備」
将規 「普通だった」
玲美愛 「普通の顔してない」
将規 「うるさい」
龍太郎 「図星だな」
将規 「お前もか」
二人は楽しそうだった。
一方で。
真優と美優も、以前より少しだけ自然に話せるようになっていた。
文化祭までの期限は変わらない。
でも、それだけではない時間もある。
そんな空気だった。
放課後。
将規は職員室へ頼まれたプリントを届けていた。
帰ろうとした時。
廊下の角。
真衣 「あ」
将規 「真衣?」
珍しい偶然だった。
真衣 「ちょうどよかった」
将規 「何が」
真衣 「少し付き合って」
将規 「は?」
真衣 「いいから」
半ば強引に連れて行かれる。
向かった先は学校近くの公園。
ベンチに座る。
将規 「で?」
真衣 「聞きたいことがある」
将規 「何だよ」
真衣は少し黙った。
そして。
真衣 「文化祭まであと三週間ちょっと」
将規 「ああ」
真衣 「ちゃんと考えてる?」
将規 「……考えてる」
真衣 「本当に?」
将規は言葉に詰まる。
真衣は将規の顔を見る。
真っ直ぐ。
逃がさないように。
真衣 「将規」
将規 「ん?」
真衣 「誰かを選ぶってさ」
真衣 「好きな人を決めることじゃないんだよ」
将規 「兄貴も似たようなこと言ってた」
真衣は少し笑う。
真衣 「一将さんらしい」
風が吹く。
真衣 「選ばなかった人の痛みも背負うこと」
将規 「……」
真衣 「それが覚悟」
静かだった。
将規は何も言えない。
真衣は立ち上がる。
真衣 「私はね」
将規 「?」
真衣 「将規がどっちを選んでも応援する」
将規は驚く。
真衣はずっと外側から見てきた。
一番冷静な立場だった。
真衣 「でも」
少しだけ笑う。
真衣 「逃げたら許さない」
将規 「厳しいな」
真衣 「当然」
その時。
真衣のスマホが鳴る。
着信。
画面を見る。
真衣 「あ」
将規 「どうした?」
真衣 「兄から」
将規 「兄?」
真衣は少し困ったように笑った。
真衣 「最近やたら心配性なんだよね」
電話に出る。
少し離れた場所で話し始める。
将規は何気なく空を見上げた。
秋の空。
高くて青い。
そして気づかない。
真衣もまた、自分の中で何かと向き合い始めていることに。
文化祭まで、あと二十二日。
恋の物語は終盤へ向かっていた。
第100話 完。




