第97話「傍観者たちの作戦会議」
文化祭まで、あと二十五日。
昼休み。
いつもの教室。
将規は机に突っ伏していた。
玲美愛 「完全に恋愛疲れしてる」
龍太郎 「してるな」
将規 「うるさい」
玲美愛と龍太郎は顔を見合わせる。
最近の将規は分かりやすかった。
授業中もぼーっとする。
休み時間も考え込む。
スマホを見てはため息。
玲美愛 「重症だ」
龍太郎 「末期だな」
将規 「聞こえてるぞ」
玲美愛 「聞かせてる」
即答だった。
将規 「最悪だ」
将規が席を立って購買へ向かう。
その背中を見送りながら。
玲美愛 「さて」
龍太郎 「さて、だな」
二人は同時に真顔になる。
玲美愛 「どう思う?」
龍太郎 「難しい」
玲美愛 「珍しく真面目」
龍太郎 「お前が言うな」
軽口を叩きながらも、二人とも分かっていた。
これはもう遊びじゃない。
玲美愛 「真優も本気」
龍太郎 「美優も本気」
玲美愛 「将規も本気」
龍太郎 「だから厄介」
沈黙。
玲美愛は頬杖をつく。
玲美愛 「正直さ」
龍太郎 「うん」
玲美愛 「どっち選んでも幸せになれる気がするんだよね」
龍太郎は少し考える。
そして頷いた。
龍太郎 「俺もそう思う」
真優は明るい。
一緒にいるだけで空気が変わる。
美優は落ち着く。
隣にいるだけで安心できる。
どちらも魅力がある。
玲美愛 「だから将規が苦しんでる」
龍太郎 「だな」
しばらく沈黙。
そして。
玲美愛 「文化祭」
龍太郎 「ああ」
玲美愛 「何か起きると思う?」
龍太郎は即答した。
龍太郎 「絶対起きる」
玲美愛 「だよね」
二人とも笑う。
その時だった。
教室のドアが開く。
真優と美優。
二人が一緒に入ってくる。
玲美愛と龍太郎は思わず姿勢を正した。
真優 「何その反応」
龍太郎 「いや別に」
美優 「怪しい」
玲美愛 「気のせい!」
完全に怪しかった。
真優と美優は席へ向かう。
二人が離れた後。
玲美愛が小声で言う。
玲美愛 「ねえ」
龍太郎 「ん?」
玲美愛 「私たち」
龍太郎 「うん」
玲美愛 「余計なことしない方がいいよね」
龍太郎は頷いた。
龍太郎 「見守るだけだ」
玲美愛 「珍しく意見一致」
龍太郎 「珍しくな」
その時。
購買から戻ってきた将規。
将規 「何の話だ?」
玲美愛 「秘密」
龍太郎 「秘密だ」
将規 「絶対ろくでもない」
玲美愛 「正解」
将規 「認めるな」
久しぶりに。
四人の間に笑いが生まれた。
ただ。
誰も知らない。
文化祭まで残り二十五日。
その前に、思わぬ出来事が起ころうとしていることを。
第97話 完。




