第93話「双子の答え」
火曜日。
朝。
将規はいつもより早く学校に来ていた。
昨日から眠れなかった。
真優の涙。
美優の寂しそうな笑顔。
頭から離れない。
教室に入る。
すると――
真優と美優が並んで座っていた。
久しぶりだった。
二人が一緒にいるのを見るのは。
将規 「……おはよう」
真優 「おはよ」
美優 「おはよう」
表情は穏やかだった。
それが逆に怖い。
昼休み。
玲美愛 「あれ絶対なんか決めた顔だよ」
将規 「やめろ」
玲美愛 「いや本当に」
将規 「怖いこと言うな」
玲美愛は肩をすくめた。
玲美愛 「でも将規」
将規 「ん?」
玲美愛 「今度は待つ側だね」
その言葉に何も返せなかった。
放課後。
将規は屋上へ呼び出された。
そこには真優と美優がいた。
風が吹く。
空は高い。
真優 「来たね」
美優 「うん」
将規 「話って……」
真優と美優は顔を見合わせる。
そして同時に頷いた。
真優 「結論から言うね」
将規の心臓が跳ねる。
美優 「私たちも決めた」
静かだった。
真優 「将規のことは好き」
美優 「今も変わらない」
将規は息を呑む。
真優 「でも」
美優 「その答えは受け入れられない」
はっきりと言った。
将規は固まる。
真優 「私、一番になりたい」
美優 「私も」
真優 「半分じゃ嫌」
美優 「共有も嫌」
風が強く吹く。
将規 「……」
何も言えない。
真優 「だから」
美優 「将規に選んでもらう」
将規 「また同じじゃ……」
真優は首を振った。
真優 「違う」
美優 「今度は期限を決める」
将規の胸がざわつく。
真優 「文化祭まで」
美優 「あと一か月」
真優 「その日までに」
美優 「一人を選んで」
沈黙。
将規は二人を見る。
二人とも泣いていない。
怒ってもいない。
ただ真剣だった。
真優 「選ばないなら」
美優 「その時は」
二人は同時に言った。
「私たちは諦める」
将規 「……っ!」
初めてだった。
二人が離れる可能性を、はっきり言葉にしたのは。
真優 「好きだからこそ」
美優 「中途半端は嫌」
将規は拳を握る。
何か言おうとする。
でも言葉が出ない。
真優 「返事はいらない」
美優 「今はね」
二人は背を向ける。
そして屋上を後にする。
残された将規。
夕日が長い影を作る。
その時。
扉の近くで真衣が壁にもたれていた。
将規 「聞いてたのか」
真衣 「少しだけ」
将規 「最悪だ」
真衣 「違うよ」
真衣は静かに笑う。
真衣 「ようやく本当のスタート」
将規 「……」
真衣 「恋愛はね」
真衣 「好きだけじゃ進まない」
将規は空を見上げた。
文化祭まで一か月。
それが本当の期限になった。
そして初めて。
将規は本気で考え始める。
――自分は誰と未来を歩きたいのか。
第93話 完。




