第92話「受け入れられない答え」
月曜日。
将規は重い足取りで教室へ向かった。
第91話の告白から、三日。
何かが変わった。
いや。
変わりすぎていた。
教室に入る。
真優はいない。
美優もいない。
将規 「……え?」
玲美愛 「あ、来た」
将規 「二人は?」
玲美愛は珍しく笑っていなかった。
玲美愛 「今日は別行動らしいよ」
将規 「別行動?」
玲美愛 「将規の答え聞いてから、ほとんど話してないみたい」
将規の胸が少し痛んだ。
昼休み。
真優は友達と食べていた。
美優は図書室。
将規が近づこうとすると。
真優 「ごめん、今無理」
将規 「……」
美優も同じだった。
美優 「少し一人にして」
将規 「わかった」
将規は初めて理解した。
二人とも傷ついていた。
放課後。
校門前。
真優が待っていた。
将規 「真優」
真優 「話す」
真っ直ぐだった。
怒っている。
でも逃げていない。
真優 「将規さ」
将規 「うん」
真優 「私たちを選んだって言ったよね」
将規 「ああ」
真優 「違うよ」
将規は黙る。
真優 「選ばなかったんだよ」
その言葉が刺さる。
真優 「私は嬉しくなかった」
将規 「……」
真優 「だって、一番になれなかったから」
静かに涙がこぼれる。
真優 「私、そんなに強くない」
将規は何も言えない。
真優 「だから少し時間ちょうだい」
そう言って去っていった。
夕方。
今度は美優。
河川敷。
美優 「将規」
将規 「うん」
美優 「私は怒ってない」
将規は少し安心しかける。
しかし。
美優 「でも納得もしてない」
その言葉で止まる。
美優 「好きって言われたのは嬉しかった」
美優 「でもね」
美優は将規を見る。
美優 「私は“特別”になりたかった」
風が吹く。
美優 「将規の答えは優しい」
美優 「でも恋愛って、優しいだけじゃ駄目なんだよ」
将規 「……」
美優 「だから私も時間が欲しい」
そう言って歩き出す。
残されたのは将規一人。
夜。
真衣から電話が来た。
真衣 「どう?」
将規 「最悪」
真衣 「だろうね」
即答だった。
将規 「俺、間違ったか?」
少し沈黙。
真衣 「それはまだ分からない」
将規 「……」
真衣 「でも一つだけ言える」
将規 「何だよ」
真衣 「選択には責任がある」
静かな声だった。
真衣 「将規は二人を選んだ」
真衣 「だから今度は、二人が将規を選ぶ番」
電話が切れる。
部屋は静かだった。
将規は天井を見上げる。
初めてだった。
答えを出したのに、不安が消えないのは。
そして翌日。
真優と美優は、それぞれある決意を固めていた。
将規の知らない場所で。
第92話 完。




