第77話「届かない距離」
火曜日。
一年二組。
朝。
真衣は少し早く登校していた。
教室にはまだ数人しかいない。
真衣 「……」
窓際の席を見る。
まだ将規はいない。
昨日。
校庭で話していた三人の姿。
あれが頭から離れなかった。
真衣 「負けたくないな」
小さく呟く。
その時。
教室のドアが開く。
将規だった。
真衣 「おはよう」
将規 「……」
少し迷う。
将規 「おはよう」
真衣 「!」
久しぶりの返事。
たった一言。
でも真衣には十分だった。
真衣 「少し機嫌直った?」
将規 「別に怒ってない」
真衣 「その言い方は怒ってる」
将規は苦笑した。
真衣 「ねぇ」
将規 「なんだ」
真衣 「放課後少しだけ話せる?」
将規 「……分かった」
真衣の表情が少し明るくなった。
一方。
昼休み。
中庭。
真優と美優。
真優 「どうだった?」
美優 「少し元気になってた」
真優 「よかった」
美優 「でも」
真優 「?」
美優 「まだ迷ってる」
真優 「うん」
二人には分かっていた。
将規はまだ答えを出していない。
そして。
その答えは簡単には出ない。
放課後。
教室。
真衣と将規。
二人きり。
真衣 「ごめん」
将規 「え?」
真衣 「先に謝る」
将規は驚く。
真衣 「喧嘩した日」
真衣 「私も感情的だった」
将規 「……」
真衣 「本当は紹介したかっただけ」
将規 「ルーカスを?」
真衣 「うん」
真衣は頷く。
真衣 「留学中に助けてくれた友達」
将規 「彼氏じゃないのか」
真衣 「は?」
真衣が固まる。
数秒後。
真衣 「まさか」
将規 「……」
真衣 「彼氏だと思ったの?」
将規 「……悪いか」
真衣 「!」
真衣の顔が赤くなる。
真衣 「嫉妬?」
将規 「違う」
真衣 「今のは嫉妬」
将規 「違う」
真衣 「嫉妬だ」
将規 「……」
反論できなかった。
真衣は少し笑った。
真衣 「そっか」
その笑顔は嬉しそうだった。
真衣 「ありがとう」
将規 「何でだよ」
真衣 「秘密」
将規はますます分からなくなった。
その頃。
真優と美優。
帰り道。
真優 「今週の日曜日」
美優 「うん」
真優 「誘おう」
美優 「将規くん?」
真優 「うん」
美優も頷く。
真優 「二人で」
美優 「正々堂々」
真優 「最後まで」
二人は笑った。
夜。
将規の部屋。
ベッドに寝転ぶ。
真衣。
真優。
美優。
三人の顔が浮かぶ。
そして。
今日の真衣の笑顔も。
将規 「本当に友達だったのか……」
胸が少し軽くなる。
それと同時に。
将規 「なんで安心してるんだろうな」
答えはまだ見えない。
でも。
少しずつ。
本当に少しずつ。
将規は自分の気持ちに近付いていた。
第77話 完




