第76話「決めた答え」
月曜日。
一年二組。
教室のドアが開く。
将規が入ってきた。
いつも通り。
……のはずだった。
しかし。
真衣が「おはよう」と声を掛けても、
将規は返事をしなかった。
真衣 「将規?」
将規 「……」
そのまま席へ向かう。
真衣 「ねぇ」
将規 「……」
真衣 「まだ怒ってるの?」
将規 「別に」
真衣 「別にじゃないでしょ」
将規 「話すことない」
教室の空気が凍る。
玲美愛 「やばい……」
雅也 「重症だな」
賢太郎 「かなりな」
真衣は黙った。
いつもの真衣なら食い下がる。
でも。
今回は違った。
昼休み。
屋上。
真優と美優。
二人はフェンス越しに空を見ていた。
真優 「将規くん変だったね」
美優 「うん」
真優 「真衣ちゃんと喧嘩したからかな」
美優 「それもある」
少し沈黙。
美優 「でも」
真優 「?」
美優 「決めよう」
真優は妹を見る。
美優 「待つだけじゃなくて」
真優 「うん」
美優 「私たちも前に進む」
真優は小さく笑った。
真優 「そうだね」
二人は頷く。
放課後。
教室。
生徒が少しずつ帰っていく。
将規は一人で席に座っていた。
そこへ。
真優と美優が来る。
真優 「将規くん」
将規 「ん?」
美優 「少し話せる?」
将規 「いいけど」
三人は校庭のベンチへ向かった。
夕日。
オレンジ色の空。
真優 「最近元気ないね」
将規 「そうか?」
美優 「そう」
将規は苦笑した。
将規 「自分でもよく分からない」
真優 「真衣ちゃんのこと?」
将規 「……」
図星だった。
美優 「喧嘩したから?」
将規 「そうかもな」
しばらく沈黙。
真優 「でも」
将規 「?」
真優 「私たちのことも考えてくれた?」
将規 「!」
美優 「返事」
将規は目を閉じた。
真優の笑顔。
美優の優しさ。
ずっと一緒にいた時間。
そして。
昨日からずっと考えていた。
将規 「考えたよ」
真優と美優が息を飲む。
将規 「何度も」
夕風が吹く。
将規 「俺は」
言葉を探す。
将規 「真衣とも大切な友達だ」
真優 「うん」
美優 「うん」
将規 「でも」
将規は二人を見る。
将規 「お前たちといる時間も」
真優 「……」
美優 「……」
将規 「同じくらい大切なんだ」
まだ答えになっていない。
しかし。
将規の中で何かが変わっていた。
真優 「焦らなくていいよ」
美優 「ちゃんと考えて」
将規 「ああ」
その頃。
教室。
一人残った真衣。
窓の外を見る。
真優。
美優。
将規。
三人が話している姿が見えた。
真衣 「……」
胸が痛む。
でも。
逃げたくなかった。
真衣 「まだ終わってない」
静かに呟く。
夕焼けの中。
それぞれの想いはすれ違いながらも、
少しずつ答えへ近付いていた。
第76話 完




