第75話「隠していた過去」
金曜日。
一年二組。
放課後。
将規はいつものように帰る準備をしていた。
すると。
真衣 「将規」
将規 「ん?」
真衣 「明日、ちょっと出かける」
将規 「そうか」
真衣 「友達と」
将規 「へぇ」
真衣 「……」
なぜか真衣は言葉を濁した。
翌日。
駅前ショッピングモール。
真衣は待ち合わせ場所に立っていた。
そして。
遠くから手を振る人物が現れる。
金髪。
高身長。
爽やかな笑顔。
青年 「Mai!」
真衣 「ルーカス!」
二人は笑顔で再会した。
ルーカスはイギリス留学中に知り合った友人だった。
同い年。
留学中によく一緒に勉強していた。
久しぶりの再会だった。
ルーカス 「久しぶり!」
真衣 「久しぶり!」
ルーカス 「元気だった?」
真衣 「もちろん!」
その頃。
偶然。
将規もモールへ来ていた。
雅也に頼まれた買い物の途中だった。
将規 「あれ?」
見覚えのある後ろ姿。
真衣だった。
将規 「真衣?」
声をかけようとした。
しかし。
その隣には見知らぬ男子。
しかも。
楽しそうに笑っている。
将規 「……誰だ」
胸の奥が妙にざわついた。
少し離れた場所。
真衣とルーカス。
ルーカス 「日本案内してよ」
真衣 「任せて」
ルーカス 「ありがとう」
その時。
真衣が将規に気付く。
真衣 「あ」
将規 「……」
真衣 「将規?」
ルーカス 「Friend?」
真衣 「うん」
真衣が近付く。
しかし。
将規の表情は硬かった。
真衣 「どうしたの?」
将規 「誰だよ」
真衣 「え?」
将規 「その人」
真衣は少し驚いた。
真衣 「ルーカス」
将規 「……」
真衣 「留学中の友達」
将規 「友達?」
真衣 「うん」
だが。
将規の機嫌は明らかに悪かった。
真衣 「何怒ってるの?」
将規 「別に」
真衣 「怒ってる」
将規 「怒ってない」
真衣 「意味分からない」
将規 「俺だって分からない」
沈黙。
真衣 「紹介しようとしたのに」
将規 「別にいい」
真衣 「よくない」
真衣も少し腹が立ってきた。
真衣 「何なの」
将規 「だから別に」
真衣 「別にじゃないでしょ!」
周囲の空気が張り詰める。
ルーカス 「Mai...」
真衣 「ごめん」
将規 「……」
真衣 「勝手に怒らないで」
将規 「怒ってない」
真衣 「じゃあ何!」
将規は答えられない。
自分でも分からないから。
真衣 「最低」
将規 「!」
真衣は背を向けた。
真衣 「行こう、ルーカス」
ルーカス 「Okay...」
二人は去っていく。
将規はその背中を見つめていた。
将規 「……」
胸が苦しい。
理由が分からない。
その夜。
真優と美優は偶然その話を聞く。
玲美愛 「えぇぇぇ!?」
真優 「喧嘩?」
美優 「珍しい」
雅也 「かなり険悪だったらしい」
賢太郎 「将規も相当だったみたいだな」
真優 「どうしてだろう」
美優 「……」
美優は少し考えた。
そして小さく呟く。
美優 「嫉妬かも」
真優 「!」
玲美愛 「!!」
教室が静かになる。
一方。
真衣の部屋。
真衣 「最悪……」
ベッドへ倒れ込む。
本当は紹介したかった。
本当は話したかった。
なのに。
喧嘩になった。
しかし。
ふと昼間の将規の顔を思い出す。
真衣 「……」
怒っていた。
でも。
どこか苦しそうだった。
真衣 「まさか」
心臓が少しだけ高鳴る。
将規もまた。
自室で天井を見上げていた。
真衣が知らない男子と笑っていた。
その光景が頭から離れない。
将規 「なんなんだよ……」
まだ気付いていない。
それが嫉妬だということに。
第75話 完




