第74話「揺れる心」
月曜日。
一年二組。
いつも通りの朝。
……のはずだった。
将規にとっては全く違った。
教室に入る。
真優がいる。
美優がいる。
そして真衣もいる。
将規 (気まずい……)
人生で一番気まずかった。
玲美愛 「おはよー!」
雅也 「元気だな」
賢太郎 「通常運転」
玲美愛 「私はいつでも元気!」
真優 「おはよう」
将規 「お、おう」
美優 「おはよう」
将規 「おう」
二人はいつも通りだった。
むしろ。
将規の方がぎこちない。
真優 「そんなに緊張しなくても」
将規 「してない」
美優 「してる」
将規 「してない」
真優 「してるね」
その様子を見て。
玲美愛 「うわぁ……」
雅也 「分かりやすい」
賢太郎 「分かりやすいな」
そこへ。
真衣がやって来た。
真衣 「おはよう」
将規 「おう」
真衣 「話ある」
将規 「え?」
真衣 「昼休み」
将規 「分かった」
短いやり取り。
だが。
真優と美優は何となく察した。
昼休み。
屋上。
真衣と将規。
二人きり。
真衣 「聞いた」
将規 「……」
真衣 「真優ちゃんと美優ちゃん」
将規 「ああ」
少し風が吹く。
真衣はフェンスにもたれた。
真衣 「返事した?」
将規 「まだ」
真衣 「そう」
しばらく沈黙。
そして。
真衣は将規を見る。
真衣 「私も好き」
将規 「!」
真衣 「知ってた?」
将規 「なんとなく」
真衣 「だよね」
真衣は笑った。
でも。
少しだけ緊張していた。
真衣 「だから私も待つ」
将規 「……」
真衣 「ちゃんと考えて」
将規 「いいのか?」
真衣 「よくない」
将規 「え?」
真衣 「本当は今すぐ選んでほしい」
将規 「……」
真衣 「でも」
真衣 「それじゃ意味ないから」
真っ直ぐな目だった。
真衣 「私は私で勝負する」
将規 「真衣」
真衣 「負けるつもりないし」
そう言って笑う。
その笑顔は強かった。
放課後。
図書室。
真優と美優。
真優 「言ったね」
美優 「うん」
真優 「真衣ちゃん」
美優 「予想通り」
真優 「三人になった」
美優 「本格的」
少し笑う。
真優 「後悔してない?」
美優 「してない」
真優 「私も」
どちらも本心だった。
一方。
玲美愛と龍太郎。
校門前。
龍太郎 「今週末どうします?」
玲美愛 「え?」
龍太郎 「この前の続き」
玲美愛 「行く!」
即答。
龍太郎 「早いですね」
玲美愛 「だって行きたい!」
龍太郎は笑った。
龍太郎 「じゃあ決まりですね」
玲美愛 「うん!」
こちらも順調だった。
その夜。
将規の部屋。
机の前。
真優。
美優。
真衣。
三人の顔が浮かぶ。
真優は優しい。
一緒にいると安心する。
美優は落ち着く。
自然体でいられる。
真衣は明るい。
一緒にいると楽しい。
将規 「……」
どの気持ちも本物だった。
だからこそ。
簡単には決められない。
窓の外。
夜空を見上げる。
将規 「ちゃんと考えないとな」
初めての恋。
初めての告白。
初めての選択。
将規の心は。
これまで以上に大きく揺れていた。
第74話 完




