第67話「初めての水族館デート」
土曜日。
朝。
玲美愛は鏡の前に立っていた。
玲美愛 「どうしよう……」
服を着替える。
また着替える。
さらに着替える。
玲美菜 「まだ?」
玲美愛 「まだ!」
玲美菜 「三回目だよ」
玲美愛 「だって!」
玲美菜 「デート?」
玲美愛 「ち、違う!」
玲美菜 「へぇ〜」
玲美愛 「その顔やめて!」
午前九時。
駅前。
龍太郎はすでに到着していた。
葉山龍太郎 「ちょっと早かったかな」
そこへ。
玲美愛 「ご、ごめん!」
龍太郎 「おはようございます!」
玲美愛 「待った?」
龍太郎 「五分くらいです!」
玲美愛 「よかった……」
実際は十五分前に来ていたが、龍太郎は言わなかった。
水族館到着。
大きな水槽。
色とりどりの魚。
玲美愛 「すごーい!」
龍太郎 「綺麗っすね!」
二人は子供のように水槽へ駆け寄った。
クラゲコーナー。
幻想的な光。
玲美愛 「わぁ……」
龍太郎 「落ち着きますね」
玲美愛 「うん」
しばらく二人とも見入る。
静かな時間。
でも不思議と気まずくない。
玲美愛 「龍太郎くん」
龍太郎 「はい?」
玲美愛 「来てよかった?」
龍太郎 「もちろんです!」
即答だった。
玲美愛 「そっか」
思わず笑顔になる。
そして。
大水槽。
巨大なジンベエザメが泳いでいる。
玲美愛 「大きい……」
龍太郎 「迫力ありますね」
二人は並んで見上げる。
少しだけ肩が近い。
玲美愛は意識してしまう。
心臓がうるさい。
その時。
人混みで少し押された。
玲美愛 「きゃっ」
バランスを崩す。
龍太郎 「あっ!」
とっさに手を伸ばした。
玲美愛の腕を支える。
玲美愛 「……」
龍太郎 「大丈夫ですか?」
玲美愛 「う、うん」
近い。
近すぎる。
玲美愛の顔が真っ赤になる。
龍太郎 「よかった」
自然な笑顔。
玲美愛 (好きだ……)
改めてそう思った。
一方その頃。
将規。
自宅。
スマホを見つめていた。
画面には真衣からのメッセージ。
来週の映画どうする?
将規 「……」
少し考える。
そして返信した。
行く
送信。
数秒後。
即返信。
やった!
将規 「早すぎるだろ」
思わず笑う。
その頃。
真衣。
自室。
真衣 「よし!」
ガッツポーズ。
母親 「どうしたの?」
真衣 「勝負開始」
母親 「?」
一方。
真優と美優。
図書館。
勉強中。
真優 「将規くん何してるかな」
美優 「たぶん家」
真優 「かな」
美優 「たぶん」
すると。
真優のスマホが震える。
玲美愛からだった。
水族館すごい!
ジンベエザメ見た!
龍太郎くん優しい!
死にそう!
真優 「元気だね」
美優 「幸せそう」
二人は笑った。
夕方。
水族館の帰り道。
玲美愛 「今日はありがとう」
龍太郎 「こちらこそ!」
玲美愛 「また行こうね」
龍太郎 「ぜひ!」
自然に出た約束。
それが玲美愛には嬉しかった。
家へ帰る途中。
玲美愛は空を見上げた。
好きな人と過ごした一日。
それだけで。
世界が少し違って見えた。
同じ空の下。
真優。
美優。
真衣。
そして将規。
それぞれの恋もまた。
少しずつ前へ進んでいた。
第67話 完




