第66話「放課後の水族館計画」
木曜日の昼休み。
一年二組の教室。
玲美愛は机に突っ伏していた。
真優 「また?」
美優 「今度は何?」
玲美愛 「大問題です」
雅也 「毎日発生してるな」
賢太郎 「平和な人生だ」
玲美愛 「平和じゃない!」
龍太郎 「どうしたんですか?」
玲美愛 「うわっ!」
突然話しかけられ、玲美愛は飛び上がった。
龍太郎 「そんな驚きます?」
玲美愛 「お、驚いてないし!」
雅也 「驚いてた」
賢太郎 「見事に」
玲美愛 「うるさい!」
教室に笑いが広がる。
昼休み終了後。
玲美愛は一人で窓際に立っていた。
玲美愛 (誘いたい)
水族館。
前から行きたいと思っていた。
でも。
玲美愛 (無理無理無理)
心臓がもたない。
その日の放課後。
中庭。
真優、美優、玲美愛の三人。
玲美愛 「相談があります」
真優 「うん」
美優 「聞く」
玲美愛 「水族館に誘いたい」
真優 「葉山くん?」
玲美愛 「うん」
美優 「いいと思う」
玲美愛 「でも断られたら?」
真優 「まだ断られてない」
玲美愛 「確かに」
美優 「考えすぎ」
玲美愛 「そうかな」
真優 「そうだよ」
玲美愛 「二人はすごいなぁ」
真優 「?」
玲美愛 「ちゃんと頑張ってるし」
美優 「私たちも不安」
玲美愛 「そうなの?」
真優 「もちろん」
美優 「毎日」
玲美愛 「意外」
真優 「意外じゃないよ」
三人は少し笑った。
その頃。
教室。
真衣が将規の机に近づく。
真衣 「将規」
将規 「なんだ」
真衣 「来週の日曜日」
将規 「うん」
真衣 「空いてる?」
将規 「またか」
真衣 「また」
将規 「何するんだ」
真衣 「映画」
将規 「映画?」
真衣 「見たいのある」
将規 「一人で行け」
真衣 「二人で行く方が楽しい」
将規 「……」
真衣 「返事は?」
将規 「考える」
真衣 「よし」
将規 「まだ行くって言ってない」
真衣 「半分成功」
そのやり取りを見ていた真優。
真優 (本当に強いなぁ)
美優 (すごい)
双子は同じ感想を抱いていた。
帰り道。
玲美愛は龍太郎と偶然一緒になった。
龍太郎 「お疲れっす!」
玲美愛 「お、お疲れ!」
緊張する。
ものすごく。
龍太郎 「そういえば」
玲美愛 「うん?」
龍太郎 「この前のぬいぐるみどうですか?」
玲美愛 「部屋に飾ってる!」
龍太郎 「本当ですか!」
玲美愛 「毎日見てる!」
龍太郎 「嬉しいっす」
龍太郎は笑った。
その笑顔に玲美愛の心臓が跳ねる。
玲美愛 (今だ)
言うなら今だ。
でも。
声が出ない。
龍太郎 「玲美愛さん?」
玲美愛 「えっ?」
龍太郎 「大丈夫ですか?」
玲美愛 「だ、大丈夫!」
深呼吸。
そして。
玲美愛 「あの!」
龍太郎 「はい!」
玲美愛 「今度の土曜日!」
龍太郎 「はい!」
玲美愛 「水族館行かない!?」
数秒。
沈黙。
玲美愛 (終わった)
心臓が止まりそうだった。
そして。
龍太郎は笑った。
龍太郎 「行きたいです!」
玲美愛 「……え?」
龍太郎 「水族館好きなんです!」
玲美愛 「本当に!?」
龍太郎 「はい!」
玲美愛 「やったぁぁぁ!!」
思わず飛び跳ねた。
龍太郎 「そんなに嬉しいんですか?」
玲美愛 「う、嬉しくない!」
龍太郎 「嬉しそうですけど」
玲美愛 「うるさい!」
顔は真っ赤だった。
夜。
玲美愛はベッドの上を転がっていた。
玲美愛 「水族館!」
ゴロゴロ。
玲美愛 「二人で!」
ゴロゴロ。
玲美愛 「どうしよう!」
母親 「床抜けるわよー」
玲美愛 「無理ー!」
一方。
真優と美優。
真優 「誘えたみたいだね」
美優 「よかった」
真優 「私たちも頑張ろう」
美優 「うん」
そして。
真衣。
真衣 「映画か」
将規の返事はまだ。
でも。
諦める気はない。
それぞれの恋は少しずつ進む。
小さな勇気が。
未来を変え始めていた。
第66話 完




