第61話「双子の宣戦布告」
月曜日。
体育祭も終わり、学校はすっかりいつもの日常に戻っていた。
……はずだった。
一年二組の教室。
朝。
将規が席に座ると、
真衣 「おはよう」
将規 「おはよう」
当たり前のように隣へ来る。
将規 「お前、自分の席行け」
真衣 「あと30秒」
将規 「何のルールだ」
真衣 「私ルール」
将規 「帰れ」
真衣 「ひどい」
そんなやり取りをしていると――
真優 「将規くん」
将規 「ん?」
真優が珍しく自分から話しかけてきた。
真優 「今日の放課後、少し時間ある?」
将規 「あるけど」
真優 「よかった」
真衣 「……」
将規 「?」
真衣 「別に」
だが少しだけ目が細くなった。
その様子を見ていた美優。
美優 (始まった)
真優が動いた。
それがすぐ分かった。
昼休み。
屋上。
真優と美優が並んでいた。
風が吹く。
真優 「ねぇ」
美優 「うん」
真優 「私、決めた」
美優 「うん」
真優 「ちゃんと行く」
美優 「……うん」
真優 「逃げない」
美優は少し黙った。
そして。
美優 「私も」
真優 「え?」
美優 「負けない」
真優 「……そっか」
二人は見つめ合う。
双子だからこそ分かる。
本気だ。
お互いに。
真優 「ライバルだね」
美優 「うん」
真優 「でも」
美優 「うん」
真優 「姉妹はやめない」
美優 「当たり前」
そして。
二人は笑った。
昔と同じ笑顔で。
放課後。
図書室。
将規 「呼ばれたけど」
真優 「ごめんね」
将規 「別にいいけど」
静かな空間。
少しだけ緊張する。
真優 「実はさ」
将規 「うん」
真優 「数学教えてほしい」
将規 「それだけ?」
真優 「それだけ」
将規 「なんだ」
真優 「なんだとは」
少し笑う。
だが。
真優の心臓はかなり速かった。
本当は。
ただ話したかっただけだから。
一時間後。
勉強会終了。
真優 「ありがとう」
将規 「役に立った?」
真優 「うん」
将規 「それならよかった」
その笑顔を見て。
真優の胸が少しだけ温かくなる。
しかし。
図書室を出ると。
待っていた人物がいた。
真衣 「終わった?」
将規 「なんでいる」
真衣 「偶然」
将規 「絶対違う」
真衣 「バレた」
真優 「……」
真衣 「……」
一瞬だけ。
空気が止まる。
真優 「真衣ちゃん」
真衣 「ん?」
真優 「私ね」
真衣 「うん」
真優 「負けないから」
真衣 「!」
将規 「は?」
真優 「将規くんのこと」
将規 「え?」
真優 「もっと知りたいと思ってる」
真衣は驚いた。
だが次の瞬間。
笑った。
真衣 「そっか」
真優 「うん」
真衣 「私も負けない」
将規 「待て待て待て」
誰も聞いていない。
その頃。
校門。
美優は一人で立っていた。
そして小さく空を見る。
美優 「二人とも先に言った」
少しだけ悔しい。
でも。
焦らない。
美優には美優のやり方がある。
美優 「……負けない」
静かに呟く。
それは誰にも聞こえなかった。
帰り道。
将規は頭を抱えていた。
将規 「なんなんだ今日……」
真優。
真衣。
そして美優。
最近。
三人の存在が大きくなりすぎている。
将規 「意味分からん……」
まだ答えは出ない。
でも。
物語は確実に次の段階へ進んでいた。
双子は決意した。
真衣も譲らない。
そして将規だけが、
まだ自分の気持ちを知らない。
恋のレースは、
ここから本当のスタートだった。
第61話 完




