第59話「文化祭の写真」
体育祭が終わって一週間。
一年二組の教室はいつも通りの昼休みを迎えていた。
そんな中。
朝倉先生が大きな封筒を抱えて教室へ入ってくる。
朝倉先生 「静かにしろ」
玲美愛 「無理です!」
朝倉先生 「そうか」
玲美愛 「ごめんなさい」
雅也 「秒で負けたな」
教室に笑いが起こる。
朝倉先生は封筒を机に置いた。
朝倉先生 「体育祭の写真だ」
教室 「おおー!」
真優 「もうできたんだ」
美優 「早い」
真衣 「見たい」
配布開始。
クラス中が一気に騒がしくなる。
玲美愛 「見せて見せて見せて!」
雅也 「近い」
賢太郎 「うるさい」
玲美愛 「これは私!」
写真には転びそうになっている玲美愛。
葉山龍太郎が支えようとしている瞬間。
玲美愛 「……」
玲美愛 「……」
玲美愛 「わあああああ!?」
雅也 「どうした」
玲美愛 「なんでこれ撮られてるの!?」
賢太郎 「ベストタイミングだな」
玲美愛 「消したい!」
龍太郎 「いい写真じゃないっすか?」
玲美愛 「よくない!」
顔が真っ赤だった。
一方。
真優。
真優 「懐かしいね」
写真をめくる。
50m走。
リレー。
二人三脚。
いろいろな場面が映っている。
そして。
真優の手が止まった。
真優 「……あ」
美優 「?」
そこに写っていたのは。
二人三脚でゴールした後の真衣と将規。
並んで笑っている。
自然な笑顔。
とても楽しそうだった。
真優 「……」
美優も覗き込む。
美優 「……」
二人とも黙る。
真衣本人は。
真衣 「あった」
将規 「何が」
真衣 「宝物」
将規 「変なこと言うな」
真衣 「ほら」
写真を見せる。
将規 「うわ」
真衣 「いい写真」
将規 「普通だろ」
真衣 「私には特別」
将規 「重い」
真衣 「失礼」
でも嬉しそうだった。
少し離れた席。
真優 「見た?」
美優 「見た」
真優 「仲良さそう」
美優 「うん」
真優 「ちょっと悔しい」
美優 「……うん」
珍しく。
双子の意見が完全一致した。
その頃。
玲美愛はまだ写真と戦っていた。
玲美愛 「なんで龍太郎ばっかり写ってるの!?」
葉山龍太郎 「偶然じゃないっすか?」
玲美愛 「偶然怖い!」
写真をめくる。
また龍太郎。
また龍太郎。
また龍太郎。
玲美愛 「おかしい!」
雅也 「お前が見てるだけだ」
賢太郎 「意識しすぎ」
玲美愛 「してない!」
全員 「してる」
玲美愛 「うぅ……」
放課後。
真優と美優は一緒に帰っていた。
真優 「ねぇ」
美優 「うん」
真優 「私、ちょっと焦ってるかも」
美優 「……私も」
真優 「真衣ちゃん強いね」
美優 「強い」
真優 「でも」
美優 「うん」
真優 「負けたくない」
美優 「うん」
夕日に照らされる帰り道。
双子は並んで歩く。
昔なら。
二人とも心の中にしまっていた。
でも今は違う。
同じ人を見ている。
同じ気持ちを抱いている。
だからこそ。
逃げないと決めた。
一方。
将規は自宅で写真を見返していた。
将規 「……」
何気なくページをめくる。
真優。
美優。
真衣。
みんな写っている。
将規 「楽しそうだな」
ふと笑う。
そして気付く。
最近。
三人を見ている時間が増えていることに。
将規 「……本当に何なんだろうな」
まだ答えは出ない。
だが。
心は確実に変わり始めていた。
体育祭の思い出は写真になった。
けれど。
その写真の中に写らなかった感情は、
今も少しずつ大きくなり続けていた。
第59話 完




