第20話「双子への想い」
放課後。
文化祭実行委員の話で盛り上がったあと。
将規は一人で家へ帰っていた。
夕焼けの空を見上げながら、ふとため息をつく。
将規 「はぁ……」
自分でも理由は分かっている。
最近、気になることがある。
いや。
気になる人がいる。
しかも一人ではない。
家に着く。
玄関を開けると、兄の一将がリビングでくつろいでいた。
一将 「おかえり」
将規 「ただいま」
一将 「珍しい顔してるな」
将規 「何が」
一将 「悩んでる顔」
将規 「別に」
一将 「俺はお前の兄だぞ」
将規 「……」
一将 「当たりか」
将規 「うるさい」
一将は笑った。
一将 「恋愛か?」
将規 「っ!?」
一将 「図星だな」
将規 「なんで分かるんだよ」
一将 「兄だから」
将規 「便利な言葉だな」
一将 「で?」
将規 「……」
一将 「誰だ?」
将規 「言いたくない」
一将 「言え」
将規 「嫌だ」
一将 「言え」
将規 「……」
数秒の沈黙。
将規は諦めたように頭を掻いた。
将規 「同じクラスの子」
一将 「へぇ」
将規 「双子」
一将 「双子?」
将規 「ああ」
一将 「どっちだ」
将規 「それが……」
一将 「?」
将規 「分からない」
一将 「は?」
将規 「真優も気になるし」
一将 「うん」
将規 「美優も気になる」
一将 「おい」
将規 「だから分からないんだよ」
一将 「それは重症だな」
将規 「自覚してる」
一将は少し考えた。
一将 「それ、本当に両方好きなのか?」
将規 「分からない」
一将 「顔が好き?」
将規 「違う」
一将 「性格?」
将規 「それもある」
一将 「なるほどな」
将規はソファに座る。
将規 「真優は話しやすいんだ」
一将 「ふむ」
将規 「一緒にいると自然に話せる」
一将 「美優は?」
将規 「落ち着く」
一将 「ほう」
将規 「静かだけど優しいし」
一将 「なるほど」
将規 「だから余計に分からない」
一将 「難しいな」
将規 「だろ」
一将 「ちょっと相談してみるか」
将規 「誰に」
一将 「双子の兄に」
将規 「は?」
一将 「知り合いがいる」
将規 「そんな都合良く?」
一将 「いるんだよ」
その夜。
一将はスマホを取り出した。
連絡先を開く。
相手の名前は――
雷斗。
一将 『久しぶり』
すぐ返信が来た。
雷斗 『珍しいな』
一将 『相談がある』
雷斗 『何だ?』
一将 『うちの弟が双子を好きになった』
雷斗 『いきなりだな』
一将 『しかもどっちも気になるらしい』
しばらく既読が付いたまま止まる。
そして。
雷斗 『それは本当に両方好きなんじゃなくて』
一将 『うん』
雷斗 『まだちゃんと相手を知れてないだけかもしれない』
一将 『なるほど』
雷斗 『双子は似てる部分もあるが別人だ』
一将 『確かにな』
雷斗 『焦って決める必要はない』
一将 『弟にもそう言うよ』
雷斗 『まずは二人をもっと知れ』
一将 『助かった』
雷斗 『恋愛相談料は高いぞ』
一将 『今度飯な』
雷斗 『それでいい』
やり取りは終わった。
翌日。
朝。
一将 「将規」
将規 「ん?」
一将 「焦るな」
将規 「は?」
一将 「好きかどうか決めるのはまだ先でいい」
将規 「……」
一将 「もっと二人を見ろ」
将規 「それだけ?」
一将 「それだけだ」
将規は少し考える。
そして小さく笑った。
将規 「案外簡単だな」
一将 「恋愛は複雑なようで単純だからな」
将規 「説得力あるのかないのか」
一将 「兄を信じろ」
将規 「半分だけ」
一将 「失礼な弟だ」
将規は笑いながら家を出る。
学校へ向かう道。
真優と美優の顔が浮かぶ。
まだ答えは出ない。
でも。
焦らなくていい。
そう思うと少しだけ気持ちが軽くなった。
そして将規は知らない。
これから文化祭準備の中で、
真優と美優、それぞれの新しい一面を見ることになるのだった――。
第20話 完




