第18話「双子とクラスの居場所」
昼休み。
一年二組の教室は今日も賑やかだった。
玲美愛が友達と話しながら笑い、雅也と将規は何やらゲームの話で盛り上がっている。
そんな中。
真優と美優はいつもの席で昼食を食べていた。
真優 「今日は唐揚げだ」
美優 「うん」
真優 「美味しい」
美優 「うん」
真優 「昨日お母さんが頑張ったらしい」
美優 「おいしい」
真優 「感想一緒じゃん」
美優 「おいしいから」
真優は苦笑した。
その時。
玲美愛が突然やって来た。
玲美愛 「二人とも!」
真優 「うわっ」
美優 「こんにちは」
玲美愛 「今から緊急会議を開きます!」
真優 「なにその突然感」
玲美愛 「議題!」
将規 「嫌な予感しかしない」
雅也 「同感」
玲美愛 「真優ちゃんと美優ちゃんについて!」
真優 「なんで!?」
美優 「?」
玲美愛 「二人はもっと人気が出るべき!」
真優 「いや意味分からない」
将規 「始まったな」
雅也 「始まったな」
賢太郎も近くにやって来る。
賢太郎 「何してるんだ?」
将規 「玲美愛の暴走」
玲美愛 「暴走じゃありません!」
雅也 「じゃあ何だ」
玲美愛 「正義の活動です!」
真優 「迷惑活動だよ」
教室の何人かが笑った。
玲美愛 「みんな聞いて!」
クラスメイト達 「なんだー?」
玲美愛 「真優ちゃんと美優ちゃんの良いところを発表してください!」
真優 「やめてぇぇぇ!」
美優 「恥ずかしい」
しかし時すでに遅し。
玲美愛が勝手に司会を始めた。
玲美愛 「まず雅也くん!」
雅也 「え、俺?」
玲美愛 「どうぞ!」
雅也 「そうだな…」
真優 「言わなくていいから」
雅也 「二人とも話しやすい」
真優 「え?」
雅也 「変に気を遣わなくていいし」
将規 「それは分かる」
雅也 「一緒にいて疲れない」
真優は少し驚いた顔をする。
玲美愛 「次!将規!」
将規 「俺か」
玲美愛 「どうぞ!」
将規 「二人とも空気読める」
真優 「そうかな」
将規 「そうだよ」
美優 「……」
将規 「クラスって目立つやつばかりじゃ成り立たないからな」
雅也 「それはある」
将規 「二人がいると落ち着く」
真優 「そんな風に思われてたんだ」
玲美愛 「次!賢太郎くん!」
賢太郎 「俺?」
玲美愛 「お願いします!」
賢太郎は少し考える。
そして静かに言った。
賢太郎 「優しいと思う」
真優 「え?」
賢太郎 「困ってる人を見たら助けるし」
美優 「普通だよ」
賢太郎 「普通じゃない」
教室が少し静かになる。
賢太郎 「当たり前にできる人は少ない」
真優は言葉を失った。
賢太郎 「だからすごいと思う」
玲美愛 「おおー!」
将規 「珍しく良いこと言ったな」
雅也 「確かに」
賢太郎 「なんだその反応」
笑いが起きる。
しかし真優の胸は少し熱くなっていた。
放課後。
帰り道。
真優 「今日疲れた」
美優 「うん」
真優 「恥ずかしかった」
美優 「うん」
真優 「でも」
美優 「うん」
真優 「ちょっと嬉しかった」
美優が微笑む。
美優 「私も」
真優 「みんな意外と見てくれてるんだね」
美優 「うん」
真優 「何もないと思ってた」
美優 「私も」
しばらく二人で歩く。
夕焼けが道路を赤く染めていた。
真優 「ねえ」
美優 「うん」
真優 「これからもさ」
美優 「うん」
真優 「今のままでいいのかな」
美優は少しだけ考えた。
そして静かに答える。
美優 「今のままじゃないよ」
真優 「え?」
美優 「少しずつ変わってる」
真優 「そうかな」
美優 「うん」
真優 「どこが?」
美優 「笑う回数」
真優 「え?」
美優 「増えた」
真優は思わず吹き出した。
真優 「そんなところ見てたの?」
美優 「見てた」
真優 「さすが双子」
美優 「うん」
真優 「じゃあ美優は?」
美優 「?」
真優 「変わった?」
美優 「少し」
真優 「どこ?」
美優 「前より話す」
真優 「確かに」
美優 「玲美愛ちゃん達のおかげ」
真優 「そうだね」
二人は顔を見合わせる。
そして同時に笑った。
真優 「なんか」
美優 「うん」
真優 「このクラスで良かった」
美優 「うん」
その言葉は自然に出た。
誰かが特別ではない。
みんなが少しずつ支え合っている。
そんな一年二組が、二人は好きだった。
夕焼けの道を並んで歩く双子。
歩幅はぴったり揃っていた。
第18話 完




