第16話「賢太郎の本音」
五月下旬。
放課後。
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一年二組。
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玲美愛
「お腹空いたー!」
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雅也
「五時間目の途中から言ってたぞ」
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将規
「今日は記録更新だな」
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真優
「早かった」
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美優
「早かった」
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玲美愛
「ひどい!」
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教室に笑いが起きる。
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そんな中。
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賢太郎は窓の外を眺めていた。
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真衣
「賢太郎?」
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賢太郎
「ん?」
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真衣
「どうしたの?」
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賢太郎
「いや、何でもない」
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そう答える。
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だが。
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実際は少し違った。
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最近。
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真衣を見るたびに気になる。
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笑顔を見ると安心する。
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誰かと楽しそうに話していると目で追ってしまう。
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そして。
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兼次郎の話になると、
少しだけ胸がざわつく。
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賢太郎
(重症だな……)
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自分で思う。
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帰宅後。
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賢太郎の部屋。
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机に向かう。
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参考書を開く。
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だが。
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五分後。
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賢太郎
「集中できねぇ……」
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閉じる。
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頭に浮かぶのは勉強ではない。
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真衣だった。
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翌日。
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昼休み。
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賢太郎は購買へ向かっていた。
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すると。
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廊下の向こう。
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真衣がいた。
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そして。
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その隣には。
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兼次郎。
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賢太郎
「……」
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兼次郎は先生へ資料を届けに来ていたらしい。
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少し立ち話をしているだけ。
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それだけだ。
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それなのに。
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胸の奥が少しだけ重くなる。
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玲美愛
「おーい」
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背後から声。
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賢太郎
「うわっ」
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玲美愛
「びっくりした」
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雅也
「お前もな」
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玲美愛は賢太郎の視線を追う。
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そして。
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察した。
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玲美愛
「あー」
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賢太郎
「何だよ」
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玲美愛
「なるほどね」
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賢太郎
「何が」
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玲美愛
「なるほどねー」
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ニヤニヤ。
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賢太郎
「殴るぞ」
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玲美愛
「図星だ」
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雅也
「図星だな」
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将規
「図星だな」
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真優
「図星」
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美優
「図星」
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賢太郎
「お前ら……」
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完全包囲だった。
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放課後。
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教室。
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みんなが帰った後。
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賢太郎は一人で残っていた。
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すると。
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真衣
「あれ?」
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賢太郎
「真衣」
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忘れ物を取りに来たらしい。
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真衣
「まだいたんだ」
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賢太郎
「ちょっとな」
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静かな教室。
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夕陽が差し込む。
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真衣
「最近元気ない?」
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賢太郎
「え?」
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真衣
「何か悩んでるなら聞くよ」
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優しい声。
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賢太郎は思う。
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こういう所だ。
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誰かが困っていると放っておけない。
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自然に手を差し伸べる。
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だから。
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好きになったのかもしれない。
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賢太郎
「大丈夫だよ」
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真衣
「本当に?」
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賢太郎
「ああ」
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少し笑う。
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賢太郎
「ただ」
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真衣
「ただ?」
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賢太郎
「真衣ってさ」
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真衣
「うん」
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賢太郎
「優しいよな」
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真衣
「え?」
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突然の言葉。
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真衣は目を丸くする。
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賢太郎
「みんな言ってるけど」
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「俺もそう思う」
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真衣
「……」
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顔が少し赤くなる。
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真衣
「ありがとう」
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小さく笑う。
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賢太郎
「だから」
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真衣
「?」
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賢太郎
「そのままでいてくれ」
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真衣
「……うん」
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二人の間に静かな空気が流れる。
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どちらも何かを言いかけて。
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結局言えなかった。
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帰り道。
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玲美愛
「どうだった?」
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賢太郎
「何がだ」
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玲美愛
「放課後!」
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賢太郎
「別に」
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玲美愛
「顔が少し嬉しそう」
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賢太郎
「気のせいだ」
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だが。
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本当は違う。
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まだ伝えられない。
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まだ自信もない。
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それでも。
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真衣の隣にいたい。
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その気持ちだけは、
以前よりずっとはっきりしていた。
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夕暮れの空を見上げながら。
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賢太郎は小さく笑う。
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恋はまだ始まったばかりだった。
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第16話 完




