第15話「気になる人」
一年二組。
昼休み。
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真衣は窓際の席で本を読んでいた。
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だが。
ページはほとんど進んでいない。
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真衣
(……努力できる人)
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脳裏に浮かぶのは、
図書室で会った兼次郎の言葉。
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『自信持て』
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たった一言。
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それなのに妙に心に残っていた。
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真衣
(なんで思い出しちゃうんだろ……)
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顔が少し熱い。
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その時。
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玲美愛
「真衣ー!」
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真衣
「ひゃっ!?」
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玲美愛
「またびっくりした」
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雅也
「最近多いな」
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将規
「考え事か?」
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真衣
「そ、そんなことないよ!」
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不自然だった。
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全員が首を傾げる。
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真優
「怪しい」
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美優
「怪しい」
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真衣
「怪しくない!」
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玲美愛
「好きな人できた?」
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真衣
「えっ!?」
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教室中に響く声。
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雅也
「声でかい」
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玲美愛
「反応が怪しい!」
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真衣
「ち、違うから!」
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顔が真っ赤。
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将規
「これは怪しいな」
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真優
「怪しい」
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美優
「怪しい」
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真衣
「違うってば!」
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必死に否定する。
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しかし。
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賢太郎だけは黙っていた。
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放課後。
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賢太郎は一人で帰り道を歩いていた。
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将規
「珍しいな」
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いつの間にか隣にいた。
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賢太郎
「何がだ?」
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将規
「今日静かだった」
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賢太郎
「そうか?」
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将規
「そうだよ」
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少し沈黙。
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そして将規が聞く。
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将規
「真衣のことか?」
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賢太郎
「……」
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図星だった。
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賢太郎
「別に」
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将規
「嘘つけ」
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即答。
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賢太郎は苦笑した。
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賢太郎
「なんかさ」
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「兼次郎先輩の話になると」
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「少し楽しそうなんだよ」
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将規
「ああ」
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理解した。
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賢太郎
「別に悪いことじゃない」
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「先輩はすごい人だし」
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「尊敬するのも分かる」
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少し俯く。
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賢太郎
「でも」
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「ちょっとだけ面白くない」
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将規
「嫉妬か」
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賢太郎
「……かもな」
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その頃。
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真衣は教室に残っていた。
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ノート整理をしている。
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すると。
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玲美愛
「ねえ」
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真衣
「なに?」
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玲美愛
「兼次郎先輩好き?」
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真衣
「ぶっ!?」
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盛大にむせた。
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真優
「聞いた」
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美優
「聞いた」
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雅也
「やめてやれ」
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真衣
「好きじゃない!」
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玲美愛
「即答だ」
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真衣
「だって違うもん!」
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でも。
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心の奥で少しだけ引っかかる。
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尊敬している。
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助けてもらった。
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認めてもらった。
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嬉しかった。
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それは確かだ。
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真衣
(でも……)
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(恋じゃないよね?)
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自分でもよく分からない。
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翌日。
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朝。
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一年二組。
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いつものように集まる仲間たち。
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真衣
「おはよう」
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賢太郎
「おはよう」
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目が合う。
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少しだけ沈黙。
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真衣
「?」
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賢太郎
「いや」
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少し笑う。
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賢太郎
「今日も頑張ろうな」
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真衣
「うん!」
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自然と笑顔になる。
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その様子を見ていた玲美愛。
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玲美愛
(あれ?)
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真優
(あれ?)
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美優
(あれ?)
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三人は同時に思った。
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もしかして。
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本当に気付いていないのは――
当人たちだけなのかもしれない。
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こうして。
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真衣の小さな憧れと、
賢太郎の小さな嫉妬は、
まだ誰にも知られないまま、
少しずつ動き始めていた。
☆
第15話 完




