第14話「真衣の小さな勇気」
勉強会から数日後。
一年二組。
昼休み。
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教室の一角で、
真衣は一人ノートを見つめていた。
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真衣
「……」
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数学の問題集。
先日のテストでミスした問題に付箋が貼られている。
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真衣
(次は間違えたくないな……)
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真衣は元々真面目だった。
努力もする。
成績も悪くない。
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けれど。
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真衣
(私って普通なんだよね……)
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玲美愛みたいに明るくない。
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雅也みたいに場をまとめられない。
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真優や美優みたいに落ち着いてもいない。
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賢太郎みたいな安心感もない。
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自分には特別なものがない。
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そんなことを時々考えてしまう。
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その時。
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玲美愛
「真衣ー!」
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真衣
「ひゃっ!?」
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後ろから肩を叩かれた。
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玲美愛
「びっくりした?」
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真衣
「びっくりした……」
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玲美愛
「ごめんごめん!」
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雅也
「絶対わざとだろ」
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玲美愛
「違いますー」
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真衣は小さく笑った。
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すると玲美愛が首を傾げる。
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玲美愛
「なんか元気ない?」
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真衣
「え?」
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玲美愛
「いつもより静か」
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将規
「確かに」
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賢太郎
「何かあったか?」
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真衣
「別に何も……」
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そう言いかけて。
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少しだけ迷う。
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でも。
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真衣
「私って特徴ないなって」
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沈黙。
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玲美愛
「は?」
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真衣
「え?」
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玲美愛
「特徴しかないじゃん」
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真衣
「ええ?」
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雅也
「確かに」
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将規
「あるな」
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真優
「いっぱいある」
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美優
「いっぱいある」
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真衣
「どこが!?」
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本気で分からない。
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玲美愛
「まず優しい」
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真衣
「普通だよ」
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雅也
「いや普通じゃない」
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将規
「困ってる奴いたら絶対助けるだろ」
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真衣
「それくらいするよ」
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賢太郎
「それを自然にできる人は少ない」
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真衣
「……」
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少し黙る。
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真優
「真衣は話しやすい」
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美優
「安心する」
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真衣
「そうかな?」
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真優
「うん」
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美優
「うん」
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玲美愛
「あと可愛い」
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真衣
「!?」
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顔が真っ赤になる。
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雅也
「おい」
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将規
「急に何言ってる」
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玲美愛
「思ったことを言いました!」
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真衣
「そ、そういうのは……」
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玲美愛
「照れた」
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真優
「照れた」
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美優
「照れた」
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真衣
「やめてぇ……」
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教室に笑いが広がる。
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☆
その日の放課後。
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真衣は図書室にいた。
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テスト対策用の参考書を探していた時。
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高い棚の本へ手を伸ばす。
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真衣
「あっ……」
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届かない。
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もう少し。
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あと少し。
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すると。
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???
「これ?」
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スッ。
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目当ての本が差し出された。
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真衣
「あ……ありがとうございます」
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顔を上げる。
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そこにいたのは。
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兼次郎だった。
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真衣
「えっ!?」
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兼次郎
「久しぶり」
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真衣
「ど、どうして学校に!?」
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兼次郎
「先生に頼まれて資料届けに来た」
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真衣は慌てる。
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勉強会以来、
伝説世代は少し特別な存在になっていた。
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兼次郎
「勉強か?」
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真衣
「はい」
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兼次郎
「真面目だな」
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真衣
「そんなことないです」
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兼次郎
「ある」
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即答。
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兼次郎
「勉強会の時も思った」
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「君は努力できる人だ」
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真衣
「……」
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兼次郎
「自信持て」
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優しく笑う。
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真衣は思い出した。
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昼休みのみんなの言葉。
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『優しい』
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『話しやすい』
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『安心する』
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真衣
(私にも……)
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(ちゃんと良い所があるのかな)
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帰り道。
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玲美愛
「おかえりー!」
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真衣
「ただいま?」
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雅也
「家じゃないぞ」
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真衣は少し笑う。
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そして。
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真衣
「ありがとう」
☆
全員
「?」
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真衣
「なんでもない」
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そう言って微笑む。
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以前より少しだけ。
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自信のある笑顔だった。
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誰かと比べなくていい。
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自分には自分の良さがある。
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それに気付けた一日だった。
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夕焼けの空の下。
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真衣は少しだけ前を向いて歩き始めた。
☆
第14話 完




