第9話「特進クラスの実力テスト」
進路指導会から数日後。
一年二組はいつも通りの朝を迎えていた。
……はずだった。
朝倉先生が教室へ入ってきた瞬間までは。
「おはよう」
生徒たち。
「おはようございます」
朝倉先生は教卓にプリントの束を置く。
そして一言。
「来週、特進クラス合同実力テストを実施します」
教室。
「え?」
静まり返る。
玲美愛が一番に反応した。
「聞いてないんですけど!?」
朝倉先生。
「今言ったからね」
「ひどい!」
雅也が頭を抱える。
「終わった……」
将規。
「まだ始まってないぞ」
真優。
「帰りたい」
美優。
「帰りたい」
朝倉先生。
「帰れません」
即答だった。
教室に笑いが起きる。
しかし問題はそこではなかった。
朝倉先生は続ける。
「今回のテストは特進クラス対抗」
「学年順位も出ます」
一瞬で空気が変わる。
真衣。
「順位……」
賢太郎。
「ガチのやつか」
朝倉先生。
「ガチのやつです」
玲美愛。
「嫌な予感しかしない」
昼休み。
一年二組では緊急会議が開かれていた。
玲美愛。
「みんな勉強してる?」
雅也。
「そこそこ」
将規。
「普通に」
真衣。
「ちゃんとやってる」
賢太郎。
「最低限」
玲美菜。
「それなり」
真優。
「してる」
美優。
「してる」
玲美愛。
「待って」
「私だけ危なくない?」
全員。
「うん」
玲美愛。
「ひどい!!」
放課後。
図書室。
珍しく一年二組のメンバーが集まっていた。
テスト対策である。
真衣は英語。
賢太郎は数学。
雅也は社会。
将規は理科。
それぞれ問題集を開いていた。
玲美愛も頑張っていた。
五分間は。
玲美愛。
「無理!」
雅也。
「早い」
将規。
「過去最速記録」
真優。
「更新」
美優。
「おめでとう」
玲美愛。
「嬉しくない!」
図書室なのに笑いをこらえるのが大変だった。
その時。
後ろから声がする。
「勉強してるな」
振り返る。
学年主任だった。
玲美愛。
「見れば分かります!」
学年主任。
「元気だな」
苦笑する。
そして机の上を見る。
「なるほど」
少し頷いた。
「兼次郎たちの代も同じようなことしてたな」
全員。
「またですか」
学年主任が笑う。
「まただ」
そして続ける。
「ただな」
少し真面目な顔になる。
「兼次郎たちがすごかったのは、成績だけじゃない」
静かになる。
「お互いに教え合っていた」
「誰か一人だけが優秀じゃなかった」
「全体が強かった」
真衣。
「全体が……」
学年主任。
「そうだ」
「だから伝説になった」
一瞬。
図書室が静かになる。
賢太郎は小さく問題集を閉じた。
「なら」
学年主任。
「ん?」
賢太郎。
「俺たちも負けられないですね」
学年主任は少し驚いた顔をした。
そして笑う。
「その意気だ」
夕方。
図書室を出る。
空はオレンジ色に染まっていた。
玲美愛。
「なんかやる気出てきた」
雅也。
「単純だな」
将規。
「でも嫌いじゃない」
真衣。
「みんなで頑張ろう」
真優。
「順位上げる」
美優。
「上げる」
賢太郎。
「まずはテストだな」
高校生活最初の大きな勝負。
特進クラス実力テストが、いよいよ始まろうとしていた。
第9話 完




