第3話「それぞれの春」
卒業式から数日後。
三月の終わり。
少しずつ暖かくなった風が街を吹き抜けていた。
☆
真衣は自室で制服を見つめていた。
机の上には卒業証書。
中学校の制服も、もう着ることはない。
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真衣 「……終わったんだなぁ」
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卒業式の日はあっという間だった。
泣いて。
笑って。
写真を撮って。
気づけば終わっていた。
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コンコン。
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結衣 「入るよー」
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真衣 「どうぞ」
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結衣が部屋へ入ってくる。
手には買い物袋。
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結衣 「高校の教科書買ってきた」
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真衣 「もうそんな時期か」
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結衣 「来週入学式だしね」
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高校。
新しい環境。
新しい生活。
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真衣 「緊張する」
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結衣 「卒業生代表やった人が?」
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真衣 「それとこれとは別」
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結衣 「あはは」
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二人で笑った。
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同じ頃。
賢太郎の家。
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賢太郎はソファに寝転びながらスマホを眺めていた。
クラスのグループチャット。
卒業後も通知が止まらない。
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玲美愛
『みんな元気!?』
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雅也
『昨日も話しただろ』
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真優
『暇』
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美優
『暇』
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将規
『宿題終わらん』
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玲美菜
『高校始まる前から終わってる』
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賢太郎 「相変わらずだな」
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通知がまた鳴る。
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真衣
『みんな暇なんだね』
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玲美愛
『いたー!!』
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雅也
『本人登場』
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真優
『代表』
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美優
『代表』
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真衣
『やめて』
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賢太郎が少し笑う。
卒業したのに。
何も変わっていない。
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数日後。
高校入学説明会。
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真衣たちはそれぞれ新しい制服に袖を通していた。
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玲美愛 「どう!?」
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真優 「似合ってる」
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美優 「うるさい」
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玲美愛 「褒めて!?」
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雅也 「似合ってる似合ってる」
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玲美愛 「雑!!」
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周囲から笑い声が上がる。
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その時。
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真衣 「わっ」
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足元の段差に気付かずバランスを崩す。
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ガシッ。
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賢太郎 「危ない」
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真衣 「あ」
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腕を支えられる。
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真衣 「ありがとう」
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賢太郎 「説明会前に怪我するなよ」
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真衣 「しないよ」
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賢太郎 「今した」
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真衣 「……」
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賢太郎 「した」
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真衣 「しました」
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少しだけ笑う。
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その様子を見ていた玲美愛たち。
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玲美愛 「見た?」
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真優 「見た」
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美優 「見た」
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雅也 「見た」
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将規 「見た」
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玲美菜 「完全に見た」
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真衣 「何が!?」
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全員 「別にー」
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真衣 「絶対何かある!」
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さらに笑い声が広がる。
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説明会終了後。
帰り道。
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桜が少しだけ咲き始めていた。
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真衣 「もう春だね」
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賢太郎 「だな」
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真衣 「高校生かぁ」
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賢太郎 「実感ない」
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真衣 「それは分かる」
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しばらく歩く。
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中学生だった日々。
楽しかった思い出。
卒業の寂しさ。
そして。
これから始まる新しい日々。
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真衣 「ねえ」
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賢太郎 「ん?」
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真衣 「高校でもよろしく」
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少し照れながら言う。
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賢太郎は一瞬驚き、
そして小さく笑った。
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賢太郎 「こちらこそ」
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風が吹く。
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舞い始めた桜の花びらが二人の間を通り過ぎていった。
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新しい春。
新しい学校。
新しい毎日。
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それはまだ始まったばかりだった。
第3話 完




