第2章「それぞれの春、その先へ」 第1話「合格発表の日」
三月。
空は綺麗に晴れていた。
でも、真衣の心は全然晴れていなかった。
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真衣 「無理、帰りたい」
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結衣 「会場着いて一分だけど」
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高校の校門前。
今日は合格発表の日。
掲示板の前には、朝からたくさんの受験生が集まっていた。
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誰かの歓声。
泣き声。
安堵した笑い声。
その全部が混ざって、空気が落ち着かない。
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真衣は結衣の後ろに半分隠れていた。
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結衣 「受験の日より緊張してない?」
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真衣 「してる」
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即答。
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少し離れた場所。
賢太郎も兼次郎と一緒に来ていた。
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兼次郎 「顔死んでるぞ」
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賢太郎 「兄ちゃんは平気だったの」
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兼次郎 「いや普通に無理だった」
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賢太郎 「安心したくない情報」
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兼次郎は少し笑う。
でも視線は掲示板の方を見ていた。
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そのとき。
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玲美愛 「真衣ちゃーん!!」
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朝から元気な声。
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玲美愛、雅也、玲美菜、将規たちも次々集まってくる。
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真優 「人多すぎ……」
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美優 「もう帰りたい」
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優人 「始まってすらない」
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少し笑いが起きる。
でも全員、どこか表情が固い。
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発表時間。
先生たちが掲示板の布を外す。
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一瞬。
空気が止まる。
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次の瞬間、一斉に人が動いた。
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真衣 「うわっ」
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結衣 「押される押される」
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人混みの中。
真衣は必死に番号を探す。
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受験番号。
何度も確認した数字。
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“317”
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真衣 「……あ」
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視界の中。
確かに、その番号があった。
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真衣 「……え」
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一瞬、理解が追いつかない。
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結衣 「真衣?」
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真衣 「あった」
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声が震える。
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真衣 「あった……!」
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結衣が一瞬目を丸くして、次の瞬間笑った。
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結衣 「おめでとう!」
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真衣 「っ……!」
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安心した瞬間、力が抜ける。
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周りでも歓声が上がっていた。
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玲美愛 「あったー!!」
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雅也 「よかった……」
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玲美菜 「将規!ある!!」
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将規 「ほんとだ……!」
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真優 「受かった……」
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美優 「うそじゃない?」
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優人 「現実見ろ」
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緊張が一気に崩れていく。
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真衣は急いで周囲を見回す。
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そして。
少し離れた場所で、賢太郎と目が合った。
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賢太郎は静かに親指を立てる。
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真衣 「……!」
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真衣も慌てて頷く。
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賢太郎の番号も、ちゃんとあった。
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数分後。
少し人混みから離れた場所。
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真衣 「受かった……」
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まだ信じられないみたいに呟く。
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賢太郎 「うん」
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真衣 「ほんとに?」
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賢太郎 「掲示板三回見た」
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真衣 「私五回見た」
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少し笑う。
でも目は少し赤かった。
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結衣たちは少し離れた場所から、その様子を見ていた。
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結衣 「青春だねぇ」
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兼次郎 「保護者みたいな顔してるぞ」
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結衣 「実際ちょっとそう」
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兼次郎は小さく笑う。
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真衣は空を見上げる。
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受験の日。
怖かった。
不安だった。
迷った。
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でも。
ちゃんと、自分で選んでここへ来た。
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そして今。
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“春から、この学校に通う”
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その現実が、ゆっくり胸に広がっていく。
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真衣 「……始まるんだ」
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賢太郎 「うん」
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風が吹く。
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高校生活という、新しい季節が。
今、静かに始まろうとしていた。




