第99話「また同じ場所」
放課後。
秋の風が少し冷たくなり始めていた。
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真衣は校門の前でスマホを握りしめている。
送るか迷って、消して。
また打って、止まる。
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『進路決めた』
そこまで入力して、数秒固まる。
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真衣 「……なんでこんな緊張するの」
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結局、そのまま送信。
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すぐ既読がつく。
そして返信。
『どこ?』
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真衣は小さく息を吐く。
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『お姉ちゃんの母校』
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送った瞬間、心臓が少しうるさくなる。
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数秒後。
『そっか』
『真衣らしい』
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真衣は少しだけ眉を寄せる。
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真衣 『どういう意味』
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『ちゃんと自分で決めた感じする』
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その言葉に、少しだけ胸が軽くなる。
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駅前。
結局、「少し話す?」という流れになった。
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ベンチ。
夕方の空。
行き交う人たち。
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賢太郎 「お疲れ」
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真衣 「そっちこそ」
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少し沈黙。
でも、もう前みたいな気まずさは少ない。
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賢太郎 「ちゃんと決めたんだな」
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真衣 「うん」
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真衣は前を見る。
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真衣 「最初は、“結衣の妹だから”って見られるの嫌だった」
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賢太郎は静かに聞いている。
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真衣 「でも」
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真衣 「それ込みでも行きたいって思ったから」
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小さな声。
でも、ちゃんと自分の言葉だった。
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賢太郎 「いいと思う」
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真衣 「……うん」
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少し風が吹く。
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真衣 「で、賢太郎は?」
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賢太郎 「決めた」
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真衣 「どこ?」
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賢太郎は少しだけ笑う。
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賢太郎 「兄ちゃんの母校」
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真衣 「へぇ……」
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そこまで言って、真衣は止まる。
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真衣 「……え?」
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賢太郎 「ん?」
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真衣 「それって」
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賢太郎 「うん」
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賢太郎は静かに続ける。
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賢太郎 「真衣と同じ高校」
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数秒、真衣の思考が止まる。
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真衣 「いや聞いてないけど!?」
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賢太郎 「今言った」
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真衣 「そういう問題じゃなくて!」
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賢太郎は少し笑う。
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真衣 「え、待って」
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賢太郎 「うん」
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真衣 「じゃあ高校も同じなの?」
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賢太郎 「そうなる」
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真衣 「……うそでしょ」
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頭が追いつかない。
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自分で決めた。
賢太郎とは別になると思っていた。
でも。
結果的に、また同じ場所。
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賢太郎 「嫌?」
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真衣 「そういう聞き方ずるい」
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賢太郎 「否定しないんだ」
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真衣 「……嫌じゃないけど」
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その声は小さい。
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賢太郎は少しだけ安心したように笑った。
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真衣 「なんか変な感じ」
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賢太郎 「何が?」
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真衣 「別々に決めたはずなのに」
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真衣 「結局また同じ場所だった」
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賢太郎は少しだけ空を見る。
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賢太郎 「まあ、縁あるんじゃない」
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真衣 「軽いなぁ」
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賢太郎 「でも嬉しい」
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真衣は一瞬だけ黙る。
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夕方の風が吹く。
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真衣 「……私も」
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その言葉は、前より自然に出た。
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帰り道。
二人は並んで歩く。
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未来はまだ遠い。
受験もある。
不安もある。
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でも。
“また同じ景色を見られる”
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その事実が、少しだけ心強かった。
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秋空の下。
二人の歩幅は、前より少しだけ揃っていた。




