表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『君の笑顔が可愛すぎで好きだった!』  作者: 優貴(Yukky)


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

190/434

第90話「ゆっくりでいい」

夕方の駅前は、いつもより少しだけ人が多かった。

部活帰りの声、買い物袋の揺れる音、電車の風。

その全部の中に、真衣と賢太郎は並んで立っていた。

さっきの校舎裏からの帰り道。

二人の間には、前より少しだけ空間がある。

でも、それは遠さじゃない。

賢太郎 「本当に、ゆっくりでいいんだな」

真衣 「うん」

真衣は即答する。

迷いが完全に消えたわけじゃない。

でも、焦りだけは少し薄れていた。

賢太郎 「俺のことも?」

真衣は少しだけ目を逸らす。

真衣 「うん、それも」

賢太郎は小さく息を吐く。

賢太郎 「そっか」

それだけ。

責めるでも、落ち込むでもない。

その反応が、逆に真衣の胸を少しだけ軽くした。

電車が通り過ぎる音。

一瞬だけ会話が途切れる。

真衣 「ねぇ」

賢太郎 「うん」

真衣 「さっきのこと、嫌だった?」

賢太郎は少しだけ考える。

賢太郎 「嫌じゃない」

真衣 「ほんとに?」

賢太郎 「うん」

賢太郎 「ちゃんと考えてるってわかったから」

真衣はその言葉で、少しだけ目を丸くする。

真衣 「考えてるの、伝わってた?」

賢太郎 「うん」

賢太郎 「前より、ちゃんと見てる感じした」

真衣は少しだけ笑う。

真衣 「見られてるのは恥ずい」

賢太郎 「ごめん」

真衣 「謝らなくていい」

駅のホームに向かう階段。

人の流れに混ざりながら、二人はゆっくり上がる。

真衣 「ねぇ」

賢太郎 「うん」

真衣 「もしさ」

賢太郎 「うん」

真衣 「私が違う高校選んでもさ」

賢太郎は少しだけ歩みを緩める。

賢太郎 「それでもいいよ」

真衣は一瞬だけ足を止めそうになる。

真衣 「……ほんとに?」

賢太郎 「うん」

賢太郎 「でも、ちゃんと寂しいとは思う」

真衣は少しだけ笑う。

真衣 「それずるい」

賢太郎 「またそれ?」

真衣 「うん」

電車が来る。

風が強くなる。

真衣はホームの端で、少しだけ前を見つめる。

真衣 「でもさ」

真衣 「そう言われると、ちゃんと考えたくなる」

賢太郎 「うん」

賢太郎はそれ以上何も言わない。

電車のドアが開く。

人が流れ込む。

真衣は一歩だけ踏み出す前に、もう一度振り返る。

真衣 「ありがとう」

賢太郎 「何が」

真衣 「ちゃんと待ってくれるとこ」

賢太郎は少しだけ笑う。

賢太郎 「まだ何も終わってないし」

真衣 「うん」

電車に乗る。

ドアが閉まる。

窓越しに見える賢太郎は、少しだけ手を上げる。

真衣も、ほんの少しだけ返す。

電車が動き出す。

真衣は座席に座りながら、窓の外を見る。

さっきまでの「答えを出さなきゃ」という焦りは、少しだけ薄れている。

その代わりに残っているのは、

「ちゃんと選びたい」という気持ちだった。

まだ途中。

でも、それでいいと初めて思えた日だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ