表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『君の笑顔が可愛すぎで好きだった!』  作者: 優貴(Yukky)


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

187/462

第87話「戻れないほどじゃない」

夜。

結衣の家のリビングは、昼間より少しだけ静かに感じた。

真衣はソファに座ったまま、カバンも置かずにいる。

さっきから、スマホを触るでもなく、ただ手の中で持っているだけだった。

結衣 「カラオケ、楽しかった?」

真衣 「……うん」

結衣はすぐに“何かあった”と気づく。

でも、急かさない。

結衣 「何かあった顔してる」

真衣 「してない」

結衣 「してる」

真衣は少しだけ視線を逸らす。

沈黙が数秒。

真衣 「……ちょっと」

それだけ言って止まる。

結衣は隣に座る。

結衣 「話せる?」

真衣は少しだけ間を置いて、ゆっくり頷く。

真衣 「賢太郎とさ」

その名前で、結衣の表情が少しだけ変わる。

真衣は続ける。

真衣 「なんか……変な感じになった」

結衣 「変な感じ?」

真衣 「うん」

真衣は言葉を探しながら、視線を落とす。

真衣 「距離が近くなったっていうか」

真衣 「でも、それが正しいのか分からなくて」

結衣は少しだけ息を吐く。

結衣 「嫌だった?」

真衣はすぐに首を振る。

真衣 「嫌じゃない」

結衣 「そっか」

また沈黙。

真衣は小さく続ける。

真衣 「でもさ」

真衣 「進むの早い気がする」

結衣は少しだけ考えてから言う。

結衣 「うん、それは分かる」

真衣は顔を上げる。

結衣 「でもね」

結衣 「戻れないほどじゃないよ」

真衣 「戻れない?」

結衣 「うん」

結衣 「“間違った”って思ったら、距離は調整できる」

真衣はその言葉をゆっくり聞く。

真衣 「調整って……」

結衣 「止まるとか、ゆっくりにするとか」

結衣 「そういうの全部含めて選ぶってことだと思う」

少しの間。

扇風機の音が静かに回る。

真衣 「お姉ちゃんさ」

結衣 「うん」

真衣 「こういうの、全部分かってるみたいに言うよね」

結衣は少しだけ笑う。

結衣 「分かってないよ」

結衣 「ただ、たぶん同じことで迷ってきただけ」

真衣はその言葉に少しだけ黙る。

真衣 「……そういうの、ずるい」

結衣 「またそれ?」

真衣 「うん」

夜が少し深くなる。

真衣はようやくカバンを置く。

でもスマホはまだ触らない。

真衣 「ねぇ」

結衣 「うん」

真衣 「私さ」

真衣 「どうしたいのか、まだよく分からない」

結衣 「うん」

真衣 「でも、嫌じゃないのは本当」

結衣は静かに頷く。

結衣 「それで十分な日もあるよ」

真衣は少しだけ息を吐く。

真衣の中にある揺れはまだ消えていない。

でも、それはもう“怖さだけ”ではなくなっていた。

選んでしまったものと、これから選ぶものの間で。

真衣はまだ立っている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ