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『君の笑顔が可愛すぎで好きだった!』  作者: 優貴(Yukky)


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第83話「ふたりの答え合わせ」

夏休みの昼間は、静かすぎて少し落ち着かない。

扇風機の音だけが、部屋の時間をゆっくり回していた。

結衣の家。

真衣はリビングでスマホを見つめたまま、何度か画面を点けては消している。

パンフレットはもう開かれていない。

代わりに、ひとつだけ決まっていることがあった。

真衣 「……来てもらお」

結衣 「誰に?」

真衣 「賢太郎」

結衣 「え」

結衣が振り向くと、真衣はすでにメッセージを打ち終えていた。

『今日ちょっと来れる?話ある』

送信。

結衣 「急だね」

真衣 「こういうのは勢い」

結衣 「誰に教わったのそれ」

真衣 「お姉ちゃんの友達の雰囲気」

結衣 「やめて」

少しだけ空気がゆるむ。

夕方。

インターホンが鳴る。

真衣 「来た」

結衣 「早い」

真衣 「近いから」

扉を開けると、賢太郎が立っていた。

落ち着いた表情で、少しだけ首をかしげる。

賢太郎 「何かあった?」

真衣 「うん」

即答だった。

賢太郎は一瞬だけ黙る。

そして靴を脱ぐ。

賢太郎 「入るね」

真衣 「うん」

結衣 「……私は?」

真衣 「いていい」

結衣 「扱い雑」

リビング。

真衣と賢太郎は向かい合って座る。

結衣は少し離れた位置で見ている。

真衣 「ねぇ」

賢太郎 「うん」

真衣 「高校、同じとこ行くじゃん」

賢太郎 「そうだね」

真衣は一度だけ息を吸う。

真衣 「それさ」

真衣 「どう思ってる?」

賢太郎はすぐには答えない。

少しだけ間を置く。

賢太郎 「普通にいいと思ってる」

真衣 「普通に?」

賢太郎 「うん」

真衣は少しだけ眉を寄せる。

真衣 「それってさ」

真衣 「私が行くから?」

賢太郎は少しだけ目を細める。

賢太郎 「それもあるけど」

賢太郎 「それだけじゃないよ」

真衣 「ほんとに?」

賢太郎 「うん」

静かな空気。

扇風機の音だけが続く。

真衣は少しだけ言葉を探す。

真衣 「じゃあさ」

真衣 「もし私が行かないって言ったら?」

賢太郎はその言葉に、初めて少しだけ表情を変える。

賢太郎 「それは困る」

真衣 「ほら」

真衣は小さく笑う。

でもその笑いは、少しだけ不安を含んでいた。

賢太郎は続ける。

賢太郎 「でも、それでも決めるのは真衣だよ」

真衣 「……ずるい」

賢太郎 「何が?」

真衣 「優しいのに、全部私に投げてる」

賢太郎 「投げてるつもりはないよ」

少しの沈黙。

結衣はそのやり取りを見ながら、何も言えないでいる。

真衣は視線を落とす。

真衣 「一緒に行くのってさ」

真衣 「安心なんだよ」

賢太郎 「うん」

真衣 「でも、それでいいのか分からない」

賢太郎 「分からなくていいと思う」

真衣 「またそれ?」

賢太郎 「だって、まだ中学生だし」

真衣 「そういう問題じゃない」

賢太郎は少しだけ考える。

賢太郎 「じゃあさ」

真衣 「うん」

賢太郎 「真衣はさ」

賢太郎 「俺がいなくても、その学校行きたいと思う?」

真衣は固まる。

長い沈黙。

扇風機の音だけが、やけに大きく感じる。

真衣 「……わかんない」

賢太郎 「そっか」

責めるでもなく、安心させるでもない返事。

それが逆に、真衣には重かった。

夜。

賢太郎が帰ったあと、結衣と真衣はリビングに残る。

真衣 「むずい」

結衣 「うん」

真衣はソファに倒れ込む。

真衣 「一緒でもいいって言ってほしかった」

結衣 「言ってほしかった?」

真衣 「ちょっとだけ」

結衣は少しだけ笑う。

結衣 「でも、それだと決めたことにならないね」

真衣 「うん……」

沈黙。

結衣は静かに言う。

結衣 「たぶんさ」

結衣 「一緒に行くかどうかじゃなくて」

結衣 「“一緒じゃなくてもいいと思えるか”なんだと思う」

真衣は天井を見たまま動かない。

真衣 「それ、難しすぎ」

結衣 「だよね」

少しだけ笑う。

でも、その笑いの奥にはちゃんと現実がある。

選ぶことは、誰かを選ぶことと、少し違う。

そしてそれは、まだ真衣には早い問いだったのかもしれない。

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