第71話「最後の帰り道」
卒業式終了後。
☆
校舎の外。
春の風。
桜はまだ満開ではない。
でも。
確かに春の匂いがしていた。
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校門前は、人で溢れていた。
写真。
保護者。
泣き声。
笑い声。
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“卒業”という言葉が、 あちこちに転がっている。
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龍也
「集合写真!!!」
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また叫んでいた。
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瑠姫愛
「さっきからずっと撮ってるじゃん」
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龍也
「最後だからだよ!!」
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結衣
「今日だけで写真フォルダ終わりそう」
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一将
「容量なくなるぞ」
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玲緒菜は笑いながらスマホを見る。
通知。
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茉優
『写真送れぇぇぇ!!!』
兼次郎
『龍也泣いた?』
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玲緒菜
「秒で来てるんだけど」
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龍也
「送るな!!」
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瑠姫愛
「もう動画あるけど?」
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龍也
「誰だ撮ったやつ!!」
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爆笑。
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その空気が、 愛しかった。
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担任も校門へ出てくる。
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龍也
「先生!!!」
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担任
「うるせぇな」
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でも。
顔は笑っていた。
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結衣
「先生、一緒に写真撮りましょう」
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担任
「はいはい」
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全員集まる。
☆
龍也
「先生もっと真ん中!!」
担任
「なんで俺主役なんだよ」
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瑠姫愛
「うちのクラス実質先生込みで完成形だから」
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担任
「意味分からん」
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カシャ。
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シャッター音。
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その一枚が、 “高校生活最後のクラス写真”になった。
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しばらくして。
少しずつ生徒たちが帰り始める。
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「またな!」
「大学でも頑張れよ!」
「連絡しろよー!」
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笑顔。
でも。
どこか寂しい。
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龍也
「……帰るか」
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その一言で、 六人が静かになる。
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帰る。
つまり。
“高校生としての帰り道”が終わる。
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六人で歩き出す。
いつもの通学路。
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何百回も歩いた道。
コンビニ。
交差点。
公園。
全部見慣れている。
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でも今日は、 全部が少し違って見えた。
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龍也
「うわー……」
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瑠姫愛
「また始まった」
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龍也
「だってもう制服でここ歩くことないんだぞ!?」
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結衣
「確かに……」
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玲緒菜は制服の袖を見る。
三年間着た制服。
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嬉しい時も。
苦しい時も。
ずっと一緒だった。
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一将
「なんだかんだ、あっという間だったな」
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雷斗
「長かったけどな」
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龍也
「どっちだよ」
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雷斗
「両方」
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少し静かになる。
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玲緒菜
「……ねえ」
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全員が見る。
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「もしさ」
「また高校生活やり直せるって言われたら、やる?」
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龍也
「やる!!!」
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即答。
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瑠姫愛
「早っ」
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龍也
「だって楽しかったもん」
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結衣は少し考える。
「……私は、もう一回頑張れる自信ないかも」
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一将
「受験がキツすぎたな」
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瑠姫愛
「でも、このメンバーならちょっとやりたい」
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玲緒菜は笑う。
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そして。
視線を雷斗へ向けた。
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玲緒菜
「雷斗は?」
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雷斗は少し黙る。
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風が吹く。
制服の裾が揺れる。
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そして。
小さく言った。
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「……まあ」
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全員待つ。
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「悪くなかった」
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数秒。
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龍也
「お前それ最高評価だろ!!」
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爆笑。
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雷斗
「うるせぇ」
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でも。
少しだけ笑っていた。
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駅前。
別れ道。
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ここで、 いつも解散していた。
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龍也
「……じゃあな」
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誰もすぐ動かない。
結衣
「また会えるのにね」
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瑠姫愛
「でも今日だけ特別感ある」
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玲緒菜はみんなを見る。
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この時間は、 もう戻らない。
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でも。
だからこそ綺麗なんだと思った。
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龍也
「また集まろうぜ」
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一将
「当たり前だ」
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雷斗
「騒がしいのは勘弁」
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瑠姫愛
「無理でーす」
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笑い声。
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そして。
六人はそれぞれの方向へ歩き始める。
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高校生活が終わった。
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でも。
きっとこれは、“終わり”じゃない。
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春の空は、 どこまでも青かった。




