第69話「卒業の日」
三月。
卒業式当日。
☆
朝。
空は綺麗に晴れていた。
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校門前。
制服姿の生徒たち。
保護者。
写真。
笑い声。
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でも。
どこかみんな、 少しだけ寂しそうだった。
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龍也
「うわぁぁぁ……」
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校門を見上げながら立ち止まる。
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瑠姫愛
「朝から情緒どうしたの」
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龍也
「だって今日で最後だぞ!?」
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結衣は小さく笑う。
「龍也、絶対泣くじゃん」
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龍也
「泣かねぇし!!」
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一将
「もう目赤いぞ」
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爆笑。
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玲緒菜は校舎を見上げる。
三年間通った場所。
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長かった。
でも。
終わる時は、 一瞬だ。
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教室。
三年A組。
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いつも通りの席。
いつも通りの窓際。
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でも。
“最後のHR”というだけで、 空気が違った。
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玲緒菜は教室を見渡す。
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そして。
二つの空席。
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茉優。
兼次郎。
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もう大学進学準備のため、 先に東京へ行っている。
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龍也
「なんかあいつらいないと変な感じだな」
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瑠姫愛
「分かる」
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結衣
「特に茉優、絶対こういう行事全力で騒ぐタイプだったし」
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玲緒菜は少し笑う。
確かに。
「卒業やばぁぁい!!」とか言いながら、 一番写真撮っていた気がする。
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担任が教室へ入ってくる。
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でも。
今日はいつもより静かだった。
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担任
「……全員いるな」
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数秒。
教室を見渡す。
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「まあ、二人いないけど」
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少し笑いが起きる。
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担任
「茉優と兼次郎からは、“卒業式出れなくてすみません”って連絡来てる」
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龍也
「真面目かよ」
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担任
「あと、“みんな泣き顔送ってください”だと」
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教室爆笑。
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瑠姫愛
「絶対あとで写真要求されるじゃん」
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結衣
「動画回しとこ」
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そして。
担任が少し真面目な顔になる。
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「……じゃあ行くか」
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体育館。
卒業式会場。
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並ぶ椅子。
壇上。
校歌。
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卒業生入場。
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静かな拍手の中、 生徒たちが歩く。
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玲緒菜は歩きながら思う。
この景色も。
この空気も。
今日で最後。
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卒業証書授与。
名前が呼ばれる。
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「篠田玲緒菜」
「はい」
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返事が体育館へ響く。
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壇上へ上がる。
証書を受け取る。
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その瞬間。
“卒業するんだ”
やっと実感した。
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席へ戻る途中。
ちらっとクラスを見る。
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龍也。
瑠姫愛。
結衣。
一将。
雷斗。
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みんな、 少し大人びて見えた。
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式は進む。
送辞。
答辞。
校歌。
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そして。
最後。
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「卒業生、退場」
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そのアナウンスで、 空気が変わった。
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終わる。
本当に。
終わる。
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龍也がもう限界だった。
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龍也
「っ……」
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瑠姫愛
「え、ちょ、ほんとに泣いてる」
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龍也
「うるせぇ……っ」
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結衣まで目が赤い。
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玲緒菜も、 涙を堪えるので精一杯だった。
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退場。
拍手。
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三年間。
長かった高校生活が、 終わる。
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教室へ戻る。
最後のHR。
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担任が教壇に立つ。
でも。
すぐには喋らなかった。
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教室を見る。
一人一人を見る。
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そして。
小さく笑った。
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「……お前ら、本当にうるさい学年だったな」
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教室に笑いが広がる。
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担任
「でも」
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少し間。
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「いいクラスだった」
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静かになる。
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「進む場所は違う」
「失敗もする」
「上手くいかないことも絶対ある」
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担任は続ける。
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「でも、お前らなら大丈夫だと思ってる」
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玲緒菜の目に涙が溜まる。
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龍也はもう隠していない。
普通に泣いている。
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担任
「卒業、おめでとう」
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その瞬間。
教室中が拍手に包まれた。
☆
高校生活が終わった。
☆
でも。
きっと。
この三年間は、 一生消えない。




